自動車向けに使うものであっても、リサイクル材の“原料”の回収は自動車業界とは離れたところで行われるのが一般的だ。しかし、トヨタ自動車は自社で使うリサイクル材を安定的に確保するため、古着やペットボトルの回収にも乗り出している。
自動車のライフサイクル全体でのCO2排出量削減のため、リサイクル材の活用が注目されている。廃棄される古着や使用済みペットボトルなどを素材として再生することで、石油由来のバージン材の製造に比べてCO2排出を抑えられるためだ。
自動車向けに使うものであっても、リサイクル材の“原料”の回収は自動車業界とは離れたところで行われるのが一般的だ。しかし、トヨタ自動車は自社で使うリサイクル材を安定的に確保するため、古着やペットボトルの回収にも乗り出している。その取り組みを「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21〜23日、パシフィコ横浜)において発表した。
古着は民間企業や自治体などがさまざまな場所で回収している。回収事業者での選別の結果、まだ着用できて商品価値のあるものはリユースに回されるが、リサイクルされるのは一部で、大半が焼却処分されている。日本では消費者が手放した古着が年間75万トン発生しており、このうちリユースが15万トン、リサイクルが10万トンで、残りの50万トンが廃棄されている。
リサイクルに回された古着は再生素材の製造会社で反毛という綿状の繊維になった後、自動車関連ではサプライヤーがその反毛を使用してフロアサイレンサーやダッシュサイレンサーなど防音部品を製造する。トヨタ自動車では古着由来の反毛を日本国内で年間1.5万トン使っている。これはトヨタ自動車の年間国内生産300万台分をまかなえる量だ。
トヨタ自動車は、連携する協力会社とともに役所や商業施設に古着回収ボックスを設置し、反毛の原料になる古着を確保している。「現時点では回収ボックスにトヨタの名前は出していないが、古着を捨てないことが自動車に役立つことを伝えていくためにも、トヨタの名前を出せたらと考えている」(トヨタ自動車の説明員)。トヨタ自動車として古着を回収する背景には、サプライヤーが古着由来の反毛を入手しにくくなっていることも影響している。
従来は防音部品にウレタンやポリエステルが使われていたが、トヨタ自動車では現在、小型車からレクサスブランドまで全面的に古着由来の反毛を採用している。レクサス「RX」の防音部品が製造時に排出するCO2を試算したところ、100%石油由来のバージン材を使う場合に比べてダッシュサイレンサーでCO2排出量が半減、フロアサイレンサーで63%減となったという。なお、車両の周波数特性に合わせて、防音部品に部分的にゴムシートなどを足すこともある。
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