国内新車生産は3社が2桁パーセント増、前年同期からの反動増で自動車メーカー生産動向(1/3 ページ)

2025年4月の日系自動車メーカーの生産は、メーカー各社によって明暗が分かれた。トヨタ自動車やダイハツ工業が2024年の認証不正問題の反動などで大幅にプラスとなった一方で、中国での販売低迷などによりホンダや日産自動車の生産が大きく減少した。

» 2025年06月17日 06時00分 公開
[MONOist]

 2025年4月の日系自動車メーカーの生産は、メーカー各社によって明暗が分かれた。トヨタ自動車やダイハツ工業が2024年の認証不正問題の反動などで大幅にプラスとなった一方で、中国での販売低迷などによりホンダや日産自動車の生産が大きく減少した。

 中国での競争激化による販売低迷は依然として続いており、各社は今後新型車の投入で巻き返しを図る方針だが、反転攻勢にはしばらくかかることが予想される。加えて、日系メーカーの主要市場である米国では、トランプ政権による追加関税が4月に発動。現地生産の強化や日本からの輸出減少など、今後さまざまな影響が出てくることが予想される。

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 4月の8社合計の世界生産は、前年同月比0.7%増の193万6972台と微増し、3カ月連続で前年実績を上回った。前年超えだったのはトヨタ、ダイハツ、SUBARU(スバル)、三菱自動車の4社。国内生産は明暗が大きかったが、8社合計では同4.2%増の63万5619台と4カ月連続で増加した。トヨタ、ダイハツ、スバル、三菱自が前年実績を上回り、トヨタ以外の3社は2桁パーセント増と伸長した。ただ、スズキやダイハツでは3月に発生した中央発條の爆発事故の影響が残った。

 2025年3月に11カ月ぶりのプラスへ転じた海外生産は再び落ち込み、前年同月比1.0%減の130万1353台と2カ月ぶりに減少した。地域別に見ると、北米は同1.3%増と2カ月連続でプラスを確保したものの、減少幅が徐々に縮んでいた中国が同12.3%減と再度大きく減少し、15カ月連続のマイナス。東南アジアもタイなどで相変わらず厳しい状況が続いている。

2025年4月の国内乗用車メーカーの生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 268,957 545,830 204,944 113,892 814,787
6.9 8.2 9.1 7.1 7.8
ホンダ 47,806 231,288 144,993 47,195 279,094
▲ 16.4 ▲ 10.9 4.9 ▲ 41.8 ▲ 11.9
スズキ 76,884 196,088 - - 272,972
▲ 11.3 4.6 - - ▲ 0.4
日産 44,056 179,593 89,478 45,951 223,649
▲ 19.1 ▲ 14.4 ▲ 14.7 ▲ 11.4 ▲ 15.4
ダイハツ 54,548 52,400 - - 106,948
155.9 2.7 - - 47.8
マツダ 55,161 39,591 28,514 8,450 94,752
▲ 12.6 0.8 3.0 28.0 ▲ 7.5
スバル 50,707 29,720 29,720 - 80,427
21.2 ▲ 9.5 ▲ 9.5 - 7.7
三菱自 37,500 26,843 - - 64,343
10.0 ▲ 9.0 - - 1.2
合計 635,619 1,301,353 497,649 215,488 1,936,972
4.2 ▲ 1.0 1.3 ▲ 12.3 0.7
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、%
※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計

トヨタ自動車

 メーカー別に見ると、トヨタの4月のグローバル生産台数は、前年同月比7.8%増の81万4787台と4カ月連続のプラス。4月の世界生産として過去最高を更新した。このうち国内生産は、同6.9%増の26万8957台と4カ月連続で前年実績を上回った。前年が「プリウス」の後席ドアハンドル電気式スイッチの不具合や、「ノア/ヴォクシー」などの生産工程の確認などで相次ぎ稼働停止していた反動増が表れたほか、新型車効果も台数を押し上げた。輸出も同6.0%増と4カ月連続で増加した。

 海外生産も好調で、前年同月比8.2%増の54万5830台と3カ月連続で前年実績を上回り、4月の海外生産として過去最高を更新した。地域別で見ると、主要市場の北米は、同9.1%増と2カ月連続のプラス。米国で販売好調なハイブリッド車(HEV)などがけん引した。中国も、依然として電気自動車(EV)の販売競争が続いているが、政府補助金に連動した販促策や新型EV「bZ3X」の受注好調などで、同7.1%増と4カ月連続で前年を上回った。

 中国以外のアジアは、ローン審査の厳格化などにより主力拠点のタイが前年同月比11.2%減と落ち込んだ。インドネシアも市場低迷が続いているが、ラマダンの期ずれに伴う稼働日の増加により同38.6%増と大きく増加した。インドも「イノーバハイクロス」や「アーバンクルーザーハイランダー」などの好調で同2.5%増。台湾やマレーシア、ベトナムなども2桁パーセント増と伸び、中国を含むアジアトータルでは同6.2%増と3カ月連続で前年実績を上回った。欧州は、トルコは増加したが、英国、フランス、チェコで伸び悩み、同2.7%減と3カ月連続のマイナスだった。

ホンダ

 台数減が続いているのがホンダだ。4月のグローバル生産台数は、前年同月比11.9%減の27万9094台と9カ月連続のマイナスだった。このうち海外生産は、同10.9%減の23万1288台と9カ月連続で減少した。

 中でも中国は、EV市場の競争激化により販売が低迷していることを受けて、複数工場の閉鎖など生産調整を実施しており、前年同月比41.8%減と大幅に減らし、9カ月連続で前年実績を下回った。中国で生産する日系5社の中でもダントツの減少幅となった。その結果、アジアトータルも同31.7%減と12カ月連続で減少した。一方、主要市場の北米は「シビック」「CR-V」の好調により同4.9%増と2カ月連続のプラスとなった。

 国内生産も低迷しており、前年同月比16.4%減の4万7806台と、2カ月連続で前年実績を下回った。前年が、年初の能登半島地震による部品不足の生産調整に対する挽回生産のほか、半導体の供給改善などもあり、高水準の生産だった反動が表れた。

 ただ、輸出は2月から埼玉製作所(埼玉県寄居町)で米国向けシビック5ドアHEVの生産を開始したため、北米向けが前年同月比6.2倍となり、世界合計も同39.8%増と3カ月ぶりに増加した。なお、このシビックは、米国の追加関税対策として、6〜7月頃をめどに米国インディアナ工場に生産移管する予定だ。

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