コバルトフリーやバイポーラ型、全固体電池などバッテリーの動向をおさらい今こそ知りたい電池のあれこれ(22)(1/3 ページ)

約3年にわたるこれまでの連載の中では、電池材料から周辺技術まで幅広く扱ってきましたが、あくまでもコラム公開時点での傾向や兆候のみを示し、今後の動向を注視したいとした内容も度々ありました。今回は、そういった内容のいくつかについて、2024年現在の動向をあらためて確認していきたいと思います。

» 2024年01月30日 06時00分 公開

 今回で22回目の寄稿となる本コラムですが、気付けば早いもので、連載開始の2021年1月から丸3年が経過しました。昨年(2023年)においても、MONOistの年間ランキングに本連載から複数の記事がランクインするなど、大変多くの方々にお読みいただき、ただただ感謝するばかりです。引き続き「今こそ知りたい電池のあれこれ」をどうぞよろしくお願いいたします。

 約3年にわたるこれまでの連載の中では、電池材料から周辺技術まで幅広く扱ってきましたが、あくまでもコラム公開時点での傾向や兆候のみを示し、今後の動向を注視したいとした内容も度々ありました。今回は、そういった内容のいくつかについて、2024年現在の動向をあらためて確認していきたいと思います。

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(1)「コバルトフリー」と「使い分け」

 以前、リチウムイオン電池の正極活物質について解説した際、今後のトレンドとして「コバルトフリー」と「使い分け」という考えを紹介しました。

 この考え方は、コスト的な観点から希少金属であるコバルトを避ける流れが進むとともに、材料ベースで安価なオリビン鉄(LFP)系と、ニッケルやマンガンを主体にしたそれ以外の材料系に大きく二極化し、搭載車両の価格や性能に応じて選択する場面が出てくるというものです。

 現在も開発トレンドとしての大枠は変わりません。例えば、2023年11月28日、東芝はコバルトフリーな5V級高電位正極に関する開発状況を発表しました。

東芝の5V級高電位正極材料を用いて試作した電池の外観[クリックで拡大] 出所:東芝

 その一方で、直近の実用化や市場投入の面で見ると、「使い分け」というよりも、中国系企業を筆頭にしたオリビン鉄(LFP)系の採用事例が目立つようになってきたのは、電池やEVに関する情報収集のために本コラムを読んでくださっている方であればご存じのことかと思います。

 LFP系材料の採用については、低コストや高安全といったメリットが挙げられる一方、リサイクル時の収益性に対する懸念などデメリットに関する面の話題もよく耳にします。これらのメリットやデメリットについても、いずれ別の機会にあらためて整理し、解説してみたいと思います。

銃弾が貫通した後のエリーパワーのセル。LFP系材料によって高い安全性を実現した[クリックで拡大]
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