東北大学は、マイクロ流路を備え、溶液センサーに特化した原子レベル薄膜二硫化モリブデン電界効果トランジスタを作成し、有機ELなどに使用される分子を溶液中で精密に検出することに成功した。
東北大学は2023年8月24日、マイクロ流路を備え、溶液センサーに特化した原子レベルの薄膜二硫化モリブデン電界効果トランジスタ(FET)を作成し、有機ELなどに使用される分子を溶液中で精密に検出することに成功したと発表した。
二硫化モリブデンは、原子レベルの薄膜が半導体の特性を示すことが知られている遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)の1種だ。今回、薄膜二硫化モリブデンを用いてFETを作成し、樹脂で作成したマイクロ流路と組み合わせて溶液センサーを開発。液体の流速は、シリンジポンプで制御でき、溶液が二硫化モリブデンチャンネル以外と直接触れないように、ソースやドレインは樹脂で保護されている。
研究グループは、有機電子受容体のTCNQ(テトラシアノキノジメタン)とその錯体であるF4-TCNQを溶質分子として、分子センシング実験を実施した。溶媒をイソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドに変化させて溶質を検出したところ、TCNQおよびF4-TCNQ溶液と二硫化モリブデンチャンネルの接触による半導体素子としての特性変化の差は、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドの順に小さくなった。
逆に、誘電率はイソプロパノール、アセニトリル、ジメチルスルホキシドの順に大きいことが知られており、立ち上がり電圧が誘電率と相関することが示された。このことは、固液界面で溶質分子と溶媒分子が結合する溶媒和に関係する。
TMD薄膜表面と溶液との相互作用は複雑で、これまで固液界面付近での溶質と溶媒の振る舞いは明らかにされていなかった。一般的に、ヘルムホルツ面と呼ばれる境界より外側では溶媒が溶質を囲む溶媒和が生じるとされているが、内側での構造はさまざまなモデルが提唱されていた。今回の実験で、ヘルツホルム面内部では、溶質の分極が部分的に遮蔽された状態でチャンネルに吸着し、遮蔽の大きさは溶媒の誘電率とともに増大することを直接観察できた。
TMDを用いたFETは、従来のシリコンを利用したFETと比べて優秀な性質を持つことが知られている。また、微細加工が可能で、体内埋め込み型の分子センサーとして応用が期待されている。
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