静岡大学は、発声などの補足動作を利用することで、複数の球種の効果的な打ち分けなど、運動タイミングの正確さを向上できることを明らかにした。
静岡大学は2025年1月29日、発声などの補足動作を利用することで、複数の球種の効果的な打ち分けなど、運動タイミングの正確さを向上できることを明らかにしたと発表した。
脳は、野球のバッティングなどのタイミング課題において、投球の速度やコースの平均、分散など標的の統計分布を学習し、最も成功率が高くなる計算をしている。この計算をベイズ推定と呼ぶ。日常の課題標的では、例えば投球における速球と遅球のように複数の統計分布が存在するため、これらを学び分けることが日常課題のベイズ推定を有効活用するために重要となる。
今回の研究では、視覚刺激のタイミングに合わせて利き手でボタンを押す動作を課題に設定し、短時分布(速球)と長時分布(遅球)の2種類を課題の標的の統計分布とした。また、発声や非利き手による応答といった補足動作を伴うことで2つの分布の学び分けが可能になると予測し、仮説を心理物理学的実験により検証した。
理論的には、ベイズ推定モデルに従い2つの分布の学び分けができた場合、短時分布と長時分布の、応答タイミングと試行間平均の関数カーブは重ならない。
実験の結果、補足動作として発声や非利き手の応答を利用したグループは、2つの分布を明確に学び分けることができた。一方、利き手のみで応答したグループは2つの分布を十分に学び分けることができなかった。
タイミング課題とベイズ推定に関する従来の研究では、単一の分布のみを参加者に経験させて、学習の可否を調べていた。今回の研究結果から、例えばテニスのレシーブで、特定の球種に狙いを定めて補足動作をすることで、成功率が上がる可能性が予測され、スポーツ技能の向上法の提案などへの応用が期待される。
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