千葉大学は、アレルギー性炎症を悪化させる「病原性Th2細胞」が、脂肪分解経路によって誘導されることを発見した。新たな標的を対象とするアレルギー治療法の開発が期待される。
千葉大学は2025年10月25日、アレルギー性炎症を悪化させる病原性Th2細胞が、免疫細胞の脂肪分解機構によって誘導されることを明らかにしたと発表した。横浜市立大学、新潟大学との共同研究による成果だ。
体内の免疫には、ウイルスや細菌を排除する1型免疫と、ダニや花粉などに反応する2型免疫があり、2型免疫を担うのがTh2細胞だ。アレルギー疾患では、この一部が病原性Th2細胞となり、炎症を強めて症状を悪化させることが知られている。これまでその誘導メカニズムは不明だったが、研究グループは免疫細胞の代謝に注目し、脂肪分解経路が深く関与していることを突き止めた。
喘息(ぜんそく)モデルマウスを用いた解析では、炎症部位でオレイン酸などの脂肪酸が顕著に増加していることを確認。活性化したTh2細胞は、これらの脂肪酸を細胞内の脂肪滴に一時的に蓄積し、脂肪分解酵素ATGL(Adipose Triglyceride Lipase)や、ミクロリポファジーと呼ばれる特殊なオートファジー機構が脂肪滴を分解することで、病原性Th2細胞が誘導されることを解明した。
さらに、ATGLを欠損させたマウスではミクロリポファジーが抑制され、病原性Th2細胞が減少。喘息の主症状である好酸球性気道炎症が改善することも確認できた。また、ヒトの好酸球性副鼻腔炎患者でも、同様の脂肪分解経路を介した病原性Th2細胞誘導機構が機能していた。
今回、免疫細胞が炎症組織で特定の脂肪酸を蓄え、それを少しずつ分解することで病原性細胞に変化する仕組みが明らかとなった。今後はATGLやミクロリポファジーの働きを制御することで、脂肪分解経路を標的とした新しいアレルギー治療法の確立を目指す。同研究の成果は、従来のステロイド治療や生物学的製剤では十分に効果が得られなかった難治性の喘息や好酸球性副鼻腔炎などに対し、新たな治療選択肢をもたらす可能性がある。
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