東京大学は、環境を「外部記憶」として活用する分散的な集団知能を、最適化の観点から捉える新理論を構築した。単純な知能しか持たない個体群でも、分散処理で高知能な単独個体の知性を超えることを示した。
東京大学は2025年10月17日、単純な知能しか持たない個体でも、環境を共通の記憶装置として情報の「書き込み」「読み出し」をすることで、集団として知的な振る舞いを扱う数理理論を構築したと発表した。分散的に情報処理すれば、高度な知能を持つ単独個体を上回る知性を発揮できる。
集団で外敵を認識して学習する免疫系や、群れで環境中のエサを探索する社会性昆虫など、生体には多様な知能が存在する。
同理論は、集団が最適な情報処理するために必要な情報の、外部記憶への最適な書き込みと読み出しの対応関係を導き出した。
迷路探索問題では、集団の各個体と単独個体が、スタート地点からエサなどの目標が配置されたゴールに到達するまでの距離を調べた。各個体は、「読み出し」として、記憶情報が多い場所に高確率で移動し探索を実施する。
一方、「書き込み」としては、到達した場所付近に目標が配置されてなければその場所の価値を低く評価し、環境中の外部記憶または個体の内部記憶に反映する。偶然ゴール付近に到達した場合は、価値が高いと評価し記憶に反映する。その結果、単独個体は賢い1個体でも偶然性に左右されゴール到達が不安定だが、個体集団は安定して速やかにゴールに到達できることが明らかとなった。
また、生成した環境情報に過剰または過小に反応すると、探索効率が落ちるといった、最適性からのズレが性能低下につながることが分かった。
この成果は、免疫系や社会性昆虫の群れなど生体の多様な知能理解に資するだけでなく、AI(人工知能)、分散コンピューティング、ロボット群制御への応用可能性が期待される。
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