名古屋大学は、ハエの求愛儀式を決める脳の配線構造と遺伝子の関係を解明し、ある種に特有の「プレゼントを贈る行動」を別種のハエに移植することに成功した。
名古屋大学と情報通信研究機構は2025年8月18日、ハエの求愛儀式を決める脳の配線構造と遺伝子の関係を解明し、ある種に特有の「プレゼントを贈る行動」を別種のハエに移植することに成功したと発表した。東北大学らとの共同研究による成果だ。
研究チームは、fruitless(fru)遺伝子を発現し、求愛を制御するfru回路に着目。ヒメウスグロショウジョウバエのオスが、食物を吐き戻してメスに差し出す行動を制御する脳の神経細胞を調べた。その結果、プレゼントを贈る行動は18個の神経細胞であるインスリンニューロンが中核的な役割を持つことが分かった。fru遺伝子の作用でこれらの神経突起が伸長し、求愛司令ニューロンと接続する。一方、キイロショウジョウバエのインスリンニューロンではfruが発現せず、突起が短い。
キイロショウジョウバエのインスリンニューロンにfru遺伝子を人為的に発現させると、神経突起が伸びて求愛司令ニューロンと結合した。そのキイロショウジョウバエは、ヒメウスグロショウジョウバエのようにプレゼントを贈る行動を示した。
同研究により、わずか18個の神経細胞に起こった1遺伝子の発現変化と配線構造の変化が、儀式の違いを生むことを実証した。この研究成果は行動進化の理解につながるほか、有害動物の行動を制御して共存を図ったり、移動体の制御技術などICTに応用したりといった展開も期待できる。
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