慶應義塾大学は、涙の通り道に存在するM細胞が、アレルギー性結膜炎の悪化に関与することを発見した。M細胞の機能を調整することで、アレルギーの発症を抑制できる可能性が示された。
慶應義塾大学は2025年3月4日、涙の通り道(涙道)に存在するM細胞が、アレルギー性結膜炎の悪化に関与することを発見したと発表した。M細胞の機能を調整することで、アレルギーの発症を抑制できる可能性が示された。
眼は日常的に花粉やウイルスなどにさらされており、それを洗い流すために涙が流れている。涙液は涙道を通って鼻に排出されるが、その途中に眼に入る異物を監視する涙道関連リンパ組織(TALT)がある。TALTの表面には異物を取り込んで免疫の働きを調整するM細胞が存在するが、今回の研究では、そのM細胞の働きと眼のアレルギー反応との関係について調べた。
まず、TALTでM細胞が欠損しているマウスを作製したところ、抗体産生に重要な胚中心B細胞と濾胞性ヘルパーT細胞が減少していることを確認した。このことから、M細胞がTALTでの免疫応答に重要であることが示された。
TALT M細胞欠損マウスに卵白アルブミン(OVA)抗原とコレラ毒素(CT)を点眼すると、結膜組織でマスト細胞の脱顆粒や血清中のOVA抗原特異的なIgE抗体が確認できた。TALTでは、アレルギー関連細胞のTh2細胞やIgE陽性胚中心B細胞、濾胞性ヘルパーT細胞が増加していた。
同マウスでアレルギー結膜炎を誘導したところ、眼のかゆみやマスト細胞の脱顆粒が減少しており、結膜炎の症状が緩和することが分かった。またM細胞の欠損により、IgE陽性胚中心B細胞と濾胞性ヘルパーT細胞が減少していた。これらのことから、M細胞による抗原取り込みがTALTのアレルギー関連細胞を誘導し、結膜炎を悪化させることが示唆された。
今回の研究から、TALTが眼粘膜の抗原に対して免疫応答し、定常状態における眼粘膜抗原の免疫監視に加え、アレルギーの悪化にも関与することが明らかとなった。M細胞からのアレルゲンや抗原の取り込みを制御することで、花粉症によるアレルギー性結膜炎抑制や点眼投与による粘膜ワクチンへの応用が期待される。
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