京都大学アイセムスは、がん存在下でT細胞を活性化させる天然物質として、植物由来のアルヴェニンIを特定した。マウスを用いた実験では、アルヴェニンIの投与により、がん免疫療法の効果を高めることを確認した。
京都大学アイセムスは2025年1月14日、がん存在下でT細胞を活性化させる天然物質として、植物由来のアルヴェニンI(クルクビタシンB 2-O-β-D-グルコシド)を特定したと発表した。マウスを用いた実験では、アルヴェニンIの投与により、がん免疫療法の効果を高めることを確認した。
がんを殺傷する免疫細胞のT細胞は、がんの周辺では機能が低下する。今回の研究では、がん細胞がT細胞の働きを抑えるPD-1/PD-L1経路を再現する細胞モデルを構築し、T細胞を活性化する物質を探索した。その結果、植物由来の天然物となるアルヴェニンIを特定した。
また、アルヴェニンIに結合するタンパク質として、リン酸化酵素NKK3を特定。これらが共有結合することでMKK3が活性化し、下流のp38MAPK経路を促進することが分かった。つまり、この経路がT細胞のミトコンドリア機能を回復させる役割を果たしているといえる。
実験では、がん細胞を移植したマウスに、アルヴェニンIを単独または免疫チェックポイント阻害剤PD-L1抗体と併用で投与したところ、腫瘍の成長が抑制された。特に、併用療法で効果が増強した。
マウス体内のリンパ節と腫瘍部位におけるT細胞を分析すると、アルヴェニンIがT細胞疲弊を軽減し、抗腫瘍免疫を強化していた。なお、安全性評価では、マウスの体重や肝臓の機能指標に重大な悪影響を及ぼさないことを確認している。
研究グループが開発した免疫チェックポイント抗体療法は、免疫を抑えるチェックポイントを担う分子を標的とする。しかし、がん部位ではT細胞が機能不全になるという課題があり、がん周囲の免疫環境を活性化させる免疫活性化剤が求められている。今回の成果から、アルヴェニンIやその類似物質が免疫活性剤として有望だと示唆された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.