東京大学 生産技術研究所は、力の強さを色の変化で可視化するウェアラブルセンサーを開発した。力を加えると色が変わるメカノクロミックポリマーの構造をナノスケールで制御し、感度を最大14倍に高めた。
東京大学 生産技術研究所は2025年4月25日、加えた力の強さを色の変化で視覚的に確認できるウェアラブルセンサーを発表した。深圳先進技術研究院との共同研究により開発した。
今回の研究では、力を加えると色を変えるメカノクロミックポリマーとして、ポリジアセチレンを使用した。ポリジアセチレンは、熱やpH、光、水、機械的刺激などさまざまな刺激に反応して、青から赤へと色が変化し、蛍光を発光するポリマーだ。
研究グループは、独自開発したx、y、z方向の力を定量化できるナノ摩擦力顕微鏡と蛍光顕微鏡の合体装置を用いて、ポリジアセチレンを構成する高分子主鎖に対して垂直方向に力を加える異方性制御により、蛍光強度が倍増することを明らかにした。また、この現象が、力を加えた局所点から数百nm先まで力の影響が及ぶドミノ効果によって解釈できることも示している。
研究グループはこの知見を応用し、指の曲げ動作で生じる力を感知するウェアラブルセンサーを開発した。ポリジアセチレンの主鎖を力の方向に対して垂直に配置すると、感度は最大14倍に向上した。
開発したセンサーは、電池なしで身近な力を可視化できるため、床ずれや靴底にかかる力の分布、部品間の摩擦などを容易に測定可能になる。ウェアラブルデバイスや医療機器、機械分野での応用が期待される。
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