ベタつかない保湿オイルを実現する乳化技術 迅速浸透でアトピーにも有効材料技術

コスメディ製薬は、経皮吸収治療(TTS)研究と皮膚浸透理論に基づく新しい乳化技術「レシソーム」の開発に成功し、同技術のOEM/ODMサービスを開始した。

» 2025年05月14日 15時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 コスメディ製薬は2025年5月13日、経皮吸収治療(TTS)研究と皮膚浸透理論に基づく新しい乳化技術「レシソーム」の開発に成功し、同技術のOEM/ODMサービスを開始したと発表した。

「レシソーム」の模式図 「レシソーム」の模式図[クリックで拡大] 出所:コスメディ製薬

レシソームの開発背景

 オイルを肌に塗るとベタつき、油っぽくなる原因は、塗った瞬間の水分の浸透/蒸発に伴い、オイル成分が肌表面に残存するからだ。そのため、オイルを水分とともに肌に迅速浸透させれば「ベタつく」「油っぽい」などの不快感はなくなり、オイル成分の機能性を高く発揮することができる。

 ホホバ油、オリーブオイル、椿(カメリア)オイルといった多くの天然オイル成分は、保湿やエージングケアにおいて、肌のバリア機能を高める効果が高いとされている。しかし、オイル独特の「ベタつく」「油っぽい」という使用感が消費者に不快感を与える。さらに、これらのオイルの大量配合では「乳化が安定しない」という技術面での課題があり、オイル高配合乳化製品は少ない状況だ。こういった状況を踏まえて、コスメディ製薬はレシソームを開発した。

レソシームの概要

 レシソームは、合成界面活性剤を使用せず、細胞膜の主成分である「レシチン」を用いて乳化、親水性ポリマーで水分をキャッチして膨潤、さらにオイル成分の分子のベールで水分を閉じ込める、W/W/O(Water in Water-soluble polymer in Oil)型の小胞だ。

W/W/O型の乳化メカニズム W/W/O型の乳化メカニズム[クリックで拡大] 出所:コスメディ製薬

 レシソームの構造は、細胞膜のリン脂質構造と類似している。特にW/W/Oの最外層であるオイル分子が細胞膜の脂質との親和性が高く、塗った瞬間にオイル分子が分配/拡散し、水分や有効成分とともに皮膚への迅速浸透を実現する。

W/W/O型の浸透メカニズム W/W/O型の浸透メカニズム[クリックで拡大] 出所:コスメディ製薬

 コスメディ製薬は同量のオイルを配合したレシソーム(W/W/O)と通常の(O/W)のクリームで比較検証を行った。具体的には、オイルが皮膚に浸透すると、肌表面のてかりはなくなり「ベタつく」「油っぽい」などのオイル成分独特の不快感はなくなることを考慮し、塗布直後の皮膚表面の状態と光沢度で検証した。

 その結果、レシソームはオイルが皮膚に迅速浸透して地肌が見え、てかりもなく、表面に残っていないことが確認できた。通常のO/W型はオイルが皮膚表面に残存し、てかりがあった。

左:レシソーム塗布直後の皮膚表面状態、右:肌表面光沢度 比較検証の結果。左:レシソーム塗布直後の皮膚表面状態、右:肌表面光沢度[クリックで拡大] 出所:コスメディ製薬

 皮膚表面光沢度の定量試験では、レシソームは使用前と塗布直後の光沢度がほぼ変わらず、オイルが迅速浸透していることが分かった。浸透速度では、通常のO/W型と比べ、約1.5倍の浸透速度を確認した。

レソシームの特徴

 レソシームは、ワセリン、スクワラン、ホホバオイルなどのオイル成分を50〜70%以上含有できる他、化粧水、乳液、クリームなどの全ての製剤に対応する。レシソームの天然指数は90%以上で、オーガニック、自然化粧品、無添加化粧品に使えるだけでなく、乾燥肌、脂性肌、混合肌の昼用/夜用クリーム製品やボディークリーム、ハンドクリームにも応用できる。

 加えて、柔らかいソーム形態であるため、肌に塗った際の抵抗感がない。コスメディ製薬が行った摩擦係数(伸び率)の検証によれば、レシソームは通常のW/O型に比べ、約3倍の伸びがある。皮膚水分量が6時間以上持続することも判明している。

左:レシソームの摩擦係数(伸び率)、右:レシソーム塗布後の皮膚水分量推移[クリックで拡大] 出所:コスメディ製薬

 同社は、皮膚の乾燥に起因する症状およびアトビー性皮膚炎疾患の治療、予防、改善にも有用な組成物として、レシソームの技術特許を取得した。今後は乾燥肌、敏感肌、アトピー肌などのトラブルケア製品としての応用を進めていく。

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