情報通信研究機構は、手で物をつかんで硬さや柔らかさを感じとるといった能動的な触覚知覚において、「指を動かして感じる触覚情報」と「指の動きの視覚情報」が統合される脳内メカニズムをfMRI実験により特定した。
情報通信研究機構は2025年4月22日、手で物をつかんでその硬さや柔らかさを感じとるといった能動的な触覚知覚において、「指を動かして感じる触覚情報」と「指の動きの視覚情報」が統合される脳内メカニズムをfMRI(機能的磁気共鳴撮像法)実験により特定したと発表した。
今回の実験では、独自開発したfMRI装置内の高磁場に影響されない力覚提示デバイスを利用している。
まずfMRI装置外において、実験参加者が指の動きを示すバーを見ながら力覚提示デバイスのプレートを指でつまむ動作をし、硬さの知覚判断する実験を実施した。その結果、知覚する硬さは力覚提示デバイスが指に与える触覚情報だけでなく、指の動きの視覚情報にも影響されることが明らかとなった。視覚刺激の動きが小さくなると、同じ触覚刺激でもより硬く感じた。
fMRI実験から、触覚情報と知覚情報を単独で提示する条件よりも、視覚と触覚の両方を提示した条件で活動が高まる脳部位が特定され、視覚情報と触覚情報の統合に関連していることが示唆された。
同じくfMRIを用いて、触覚と視覚が不整合なときよりも、整合しているときの方が活動が高まる脳部位も特定された。動的因果モデリングにより脳部位間のネットワークを解析したところ、視覚情報と触覚情報の整合性判断に関わる脳部位MCCから、触覚処理に関わる脳部位S1およびPOへの情報の流れが示された。
この結果から、視覚情報のボトムアップ処理に対して、視覚と触覚が一致するか否かの整合性判断のトップダウン情報が関与する可能性が明らかとなった。
今回、触覚と視覚の情報統合に関わる脳内ネットワークの一端が解明された。マルチモーダル情報のXR(クロスリアリティー)技術への貢献が期待される。
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