早期アルツハイマー病治療薬が病態進行を抑制するメカニズムの一端を解明医療技術ニュース

金沢大学とエーザイは、早期アルツハイマー病の治療薬レカネマブが、アルツハイマー病の病態進行を抑制するメカニズムの一端を明らかにした。

» 2025年01月27日 15時00分 公開
[MONOist]

 金沢大学は2025年1月7日、早期AD(アルツハイマー病)の治療薬レカネマブが、ADの病態進行を抑制するメカニズムの一端を明らかにしたと発表した。エーザイとの共同研究による成果だ。

 レカネマブはデュアルアクションを有する抗体で、プラークの除去に加えて、異常凝集アミロイドβ(Aβ)の中でも神経毒性の高いPF(アミロイドβプロトフィブリル)と選択的に結合する。

 今回、レカネマブ関連PF(Lec-PF)測定系を新たに開発し、ヒト脳脊髄液中のLec-PF濃度を測定した。また、他の脳脊髄液マーカーであるAβ40、Aβ42、p-tau(リン酸化タウ)181、p-tau 217、total-tau(総タウ)、ニューログラニン濃度との関連を解析した。

 その結果、ADによる軽度認知障害および認知症患者の脳脊髄液中のLec-PF濃度は、正常認知機能の人と比べて有意に高かった。

キャプション 臨床診断およびアミロイド陽性、陰性による脳脊髄液中のレカネマブ関連アミロイドβプロトフィブリル(CSF Lec-PF)濃度。箱ひげ図のボックスは四分位範囲、水平線は中央値を示す。YNC:アミロイド陰性若年正常対照群、AMC:アミロイド陰性同年代対照群、CI−:アミロイド陰性認知機能低下群、CU+:アミロイド陽性認知機能正常群、MCI+:アミロイド陽性軽度認知障害群、AD+:アミロイド陽性アルツハイマー型認知症群、CSF:脳脊髄液、*p<0.05[クリックで拡大] 出所:金沢大学

 また被験者全体において、脳脊髄液中のLec-PF濃度は、Aβ42、Aβ42/40比、p-tau 181、p-tau 217、total-tau、ニューログラニンの全てと相関(Spearman係数0.2以上)が認められた。特に、Aβ陽性群では、Lec-PFFは、AβカスケードのAβ下流に当たるtotal-tauおよびニューログラニンと強い相関(同0.4以上)を示し、神経変性に関連する高毒性の病態タンパク質であることが示唆された。

キャプション 脳脊髄液マーカーと脳脊髄液中のレカネマブ関連アミロイドβプロトフィブリル(CSF Lec-PF)の相関[クリックで拡大] 出所:金沢大学

 レカネマブは、日本では2023年に承認された早期AD治療薬だ。しかし、治療標的であるPFがADの病態進行においてどのような役割を担うかは、明らかにされていなかった。

 今回、AD患者の脳脊髄液中にレカネマブが捕捉するPFが存在すること、Lec-PFが神経変性に関連する高毒性の病態タンパク質であることが示されたことから、脳脊髄液中のLec-PF濃度を測定してレカネマブ治療の有効性判定に活用できる可能性がある。また、Lec-PF濃度はtotal-tauやニューログラニンなどの神経変性マーカーと強く相関することから、AD患者の予後予測への活用が期待される。

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