東京大学は、マウスを用いて加齢による卵子の変化が妊娠に及ぼす影響を解析し、35歳以降の妊よう性低下には、卵子透明帯の網目構造の変化が関与する可能性を発見した。
東京大学は2024年12月28日、マウスを用いて加齢による卵子の変化が妊娠に及ぼす影響を解析し、35歳以降の妊よう性低下には、卵子透明帯の網目構造の変化が関与する可能性を発見したと発表した。大阪大学らとの共同研究による成果だ。
実験では、ヒトの35〜40歳に相当する加齢マウスと、20〜25歳に相当する若齢マウスを用いた。妊娠するために必要な能力となる妊よう性について、加齢が与える影響を調べたところ、加齢マウスの産仔数と排卵数は若齢マウスより有意に低かった。
卵巣内の成熟卵細胞の卵子−卵丘細胞の相互作用に着目したところ、卵子の支持細胞となる卵丘細胞と卵子の相互作用が低下していた。体外受精でも、加齢卵子の受精率は若齢卵子に比べて低かった。加齢特異的な遺伝子発現の変化は認められなかったため、卵子を包む卵子透明帯への精子の結合能を調査。その結果、加齢マウスの卵子透明帯には、精子が結合しにくいこと分かった。
走査型電子顕微鏡やフラクタル解析でその構造を調べると、卵子透明帯に特徴的な網目構造が加齢によって凹凸のない平滑構造に変化していた。このことから、透明帯の構造が受精の可否に関与する可能性が示唆された。
また、還元型グルタチオンを添加して体外受精をすると、加齢マウスの卵子透明帯が膨化して受精率が回復した。体外受精後の胚発生率は、還元型グルタチオンの有無で違いはなかった。
ヒトの妊よう性は35歳を超えると顕著に低下するが、その詳細な原因は明らかになっていなかった。今回の研究成果は、体外受精率の低い女性の卵子や加齢卵子を用いた、新たな不妊治療法の開発につながることが期待される。
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