電通は、スポーツ観戦時に生じる感情のシンクロ現象を解明した。脳波や心拍などの生体データ分析から、知らない者同士でも感情が同期し、満足度を高めることを確認した。
電通は2026年5月1日、早稲田大学、東海大学との共同研究で、スポーツ観戦中に生じる「感情のシンクロ」現象とその特徴を解明したと発表した。サッカー日本代表戦の会場観戦者の生体データや観戦後の満足度調査などから、同じ瞬間を共有することで、知らない者同士でも感情が強く同期し、幸福感に寄与することを明らかにした。
研究は、2025年3月20日に埼玉スタジアム2002で開催された「FIFAワールドカップアジア」最終予選を対象に実施した。会場では計測機器を着用した14人の脳波や心拍を測定し、観戦後に満足度や心理的なつながりについてアスキング調査した。さらに、テレビ観戦者817人へのアスキング調査を組み合わせることで、スポーツ特有の感情変化を調べた。
分析の結果、観戦者の感情は友人間にとどまらず、隣り合わせた他人同士でも強くシンクロする傾向が確認された。特に会場観戦では、友人と並んでいる場合でも、離れた席の他人とより強く脳波や心拍が同期する事例が見られた。これは、個別の人間関係よりも、「同じ試合、同じ瞬間を共有している」という状況が、感情反応に強く影響することを示唆している。
また、他者と感情が一致している人ほど、試合への没入感や満足度が高いことが分かった。観戦前後で他者との心理的なつながりが強化され、とりわけ初対面同士において距離感を縮める効果が大きく、会話や交流の有無を問わず社会的なつながりを生む体験であることが示された。
テレビ観戦者への調査では、他者との感情共有を自覚した人ほどファンとしての自覚が高く、観戦体験を人生の充実感や幸福感に結び付ける傾向が一定期間後も継続することが確認された。この結果から、スポーツ観戦は単なる娯楽を超え、ウェルビーイングに持続的な影響を与える可能性が示された。
同社は今回の知見を、スタジアムの体験設計やスポンサー企業のコミュニケーション、地域活性化施策などに活用する方針だ。電通は2025年7月にスポーツ未来研究所を発足させ、スポーツの真の価値を探究する取り組みを推進している。
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