COVID-19ワクチン3回目接種後の高齢者の免疫応答特性を解明医療技術ニュース

京都大学は、新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチンの3回目接種による免疫応答を解析した。65歳以上の高齢者でも免疫応答は活性化するが、成人より記憶T細胞応答が低いこと、記憶B細胞の応答は効率よく誘導されることが分かった。

» 2025年01月20日 15時00分 公開
[MONOist]

 京都大学は2024年12月23日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンの3回目接種による免疫応答を解析し、65歳以上の高齢者でも免疫応答は活性化するが、65歳未満の成人より記憶T細胞応答が低く、一方で記憶B細胞の応答は効率よく誘導されることを発表した。米国ラホヤ研究所らとの共同研究による成果だ。

キャプション RBDに対する抗体価の年齢差[クリックで拡大] 出所:京都大学

 今回の研究では、3回目のCOVID-19 mRNAワクチンを接種した人を対象に、免疫記憶応答の年齢差を調査した。ウイルスの受容体結合ドメイン(RDM)に対するIgG抗体の抗体価を経時的に見たところ、2回目接種後のピーク値は高齢者で低く、6カ月後には両群で約20分の1まで低下していた。3回目接種で高齢者の抗体価は成人群と同等まで上昇し、その6カ月後も、2回目接種後6カ月後と比較して高い濃度を維持した。

キャプション 抗体産生を促進するヘルパーT細胞応答の年齢差[クリックで拡大] 出所:京都大学

 もともとの新型コロナウイルス株と変異株のオミクロン株に対する中和抗体を調べたところ、2回目接種後は両群ともオミクロン株に対する中和能力はほぼなかった。しかし3回目接種後は、両群ともに中和活性が上昇して差は見られなかった。

 3回目接種で高齢者の抗体産生が向上したメカニズムを明らかにするために、抗体産生を促す記憶ヘルパーT細胞(cTfh1細胞)の応答を調査した。その結果、3回目接種後は両群ともcTfh1細胞の数は増加したが、成人に比べて高齢者は値が低かった。

 ウイルスに感染した細胞を殺傷する細胞障害性T細胞(CD8+T細胞)も、3回目接種後に両群ともに増加したものの、高齢者は成人より低い値だった。一方で、抗体を産生するB細胞は、1回目接種では高齢者は成人より少ない傾向にあったが、3回目接種により成人と同等に誘導されていた。

キャプション 抗体を作るB細胞応答の年齢差[クリックで拡大] 出所:京都大学

 高齢者は免疫の能力そのものが低下しているため、成人に比べてワクチンの利益と有効性が限定的とされる。COVID-19 mRNAワクチンも、2回接種後の抗体価と中和活性のピーク値が成人より低く、また早く低下することから、高齢者は接種後早期に感染しやすくなるとされる。

 一方、3回目以降のワクチン反復接種の効果は、1、2回目の接種で誘導されて体内に残った記憶T細胞と記憶B細胞が主に担うため、最初の記憶応答より早くかつ強く応答する。今回、3回目のブースター接種による高齢者の記憶応答特性が明らかになったことで、より効果的なワクチンの開発が期待される。

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