順天堂大学は、AIを駆使し、細胞内のタンパク質品質管理の新たな仕組みを明らかにした。UFM1連結酵素が三者複合体を形成し、この複合体とUFM1が連結されたRPL26との結合がタンパク質品質管理機構ER-RQCに必要であることが示された。
順天堂大学は2023年8月19日、AI(人工知能)を駆使し、細胞内のタンパク質品質管理の新たな仕組みを明らかにしたと発表した。北海道大学遺伝子病制御研究所、東京大学医科学研究所との共同研究による成果で、基礎研究でのAIの有用性を示すものとなる。
研究グループは、AIプログラム「AlphaFold Multimer」を活用して、UFM1連結酵素複合体の立体構造を高精度に予測した。UFM1システムは、UFM1をUFM1活性化酵素、UFM1結合酵素、UFM1連結酵素を介して細胞内タンパク質に共有結合するタンパク質修飾システムで、UFM1が細胞内でどのタンパク質に結合するかを決定する。
今回の構造予測により、UFM1連結酵素のUFL1が小胞体局在タンパク質UFB1、UFL1結合タンパク質CDK5RAP3と三者複合体を形成した際、小胞体上で翻訳が停止したリボソームRPL26にUFM1が連結することが分かった。
また、このUFM1連結酵素複合体とUFM1が連結されたRPL26との結合が、小胞体で合成途中のタンパク質品質管理機構ER-RQCに必要であることが示された。
UFM1システムは、研究グループがこれまでの研究で、ヒトゲノムデータベースと質量分析解析を用いて発見したシステム。このシステムの異常が、遺伝性の発達性てんかん性脳症を引き起こすことが報告されている。今回の研究成果は、同疾患の発症機構の解明に役立つことが期待される。
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