本連載第31回で、オーストラリア政府の「2018〜2022年オーストラリア国家デジタルヘルス戦略」を取り上げたが、同国のデジタル技術は医療から介護分野へと拡大している。
本連載第31回で、オーストラリア政府の「2018〜2022年オーストラリア国家デジタルヘルス戦略」(関連情報、PDF)を取り上げたが、同国のデジタル技術は医療から介護分野へと拡大している。
2024年2月22日、オーストラリア連邦政府のデジタルヘルス庁は、2018〜2022年戦略の後継版となる「2023〜2028年オーストラリア国家デジタルヘルス戦略」(関連情報)を発表している。
図1は、2023〜2028年デジタルヘルス戦略の全体像を示したものである。
2018〜2022年デジタルヘルス戦略では「患者と供給者の双方にとって革新的で使いやすいツールを広範囲に提供する、シームレスで安全でセキュアなデジタルヘルスサービスと技術によって実現できる、全オーストラリア国民のよりよい健康」をビジョンに設定していたが、2023〜2028年デジタルヘルス戦略では、「つながりのあるデジタル化された保健医療システムを通じて、全てのオーストラリア国民にとってインクルーシブで持続可能な、より健康な未来を実現する」をビジョンに設定している。北欧諸国のデジタルヘルス戦略と同様に、オーストラリアでも、「インクルーシブ(Inclusive)」や「持続可能(Sustainable)」といったキーワードが追加された。
そして、新たなデジタルヘルス戦略は、図1に示されている4つの変革を可能にする要因に渡り、一貫した継続的な国家的取り組みを通じて達成を目指すとともに、オーストラリアの保健医療システムのために特定された4つの主要なアウトカムの実現を支援するとしている。
また、保健医療エコシステムにおけるパートナーとコラボレーターの1つに「産業とテクノロジーベンダー」が位置付けられた。具体的には、臨床情報システム開発者、ソフトウェア開発者、アントレプレナー、セキュアメッセージングプロバイダー、標準化団体、医療情報学コミュニティー、治療用品産業などが含まれる。
2023〜2028年デジタルヘルス戦略は、以下のような構成になっている。
2018〜2022年戦略と同様に、2023〜2028年デジタルヘルス戦略でも、デリバリーロードマップ(関連情報、PDF)が策定された。表1は、戦略で特定された4つの主要なアウトカムの実現のために、デリバリーロードマップで優先すべき領域を整理したものである。
2018〜2022年版ロードマップと比較して表1におけるロードマップの優先領域を見ると、デジタルヘルス技術およびそこから生成されるデータをベースとするテーマが増えていることが分かる。
加えて新たなロードマップでは、表1中の5つのパートナー/コラボレーターに加え、医療以外のケアやウェルビーイングサービスを提供するケア提供者について言及している点が特徴的だ。具体的には、高齢者介護提供者、高齢者入居施設、障害者サービス、退役軍人サービス、ソーシャルサービスなどを挙げている。
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