また、オーストラリア保健・障害者・高齢化省は、2024〜2029年高齢者介護データ・デジタル戦略と合わせて、具体的な行動計画(関連情報)を公表している。
図4は、この行動計画の概要を示したものである。
ここでは、前述の図2のアウトカムおよび優先順位に準拠して具体的な行動を設定し、おのおのの進捗状況を可視化している。
この中で、高齢者ケアにおけるAI(人工知能)やVR(仮想現実)/メタバースの利用については、「アウトカム4:最新のデータとデジタル基盤が、協調的で標準に基づいたケアシステムを支える」の「優先順位8:イノベーションを奨励し、管理責任を果たす」の中で、以下のようなアクションを計画している。
本連載第87回で触れたように、オーストラリアは、ゲーミフィケーションの産業振興と雇用創出に取り組んでおり、高齢者介護分野での新技術適用が注目される。
他方、オーストラリアの介護法制についてみると、政府資金による高齢者介護を規定した1997年高齢者介護法(Aged Care Act 1997)(関連情報)に基づいて、資金提供、規制、サービス提供者の承認、ケアの質、ケアを受ける人々の権利などの項目に関する規則を定めてきた。
従来の1997年高齢者介護法がサービス提供者や資金供給に焦点を当てていたのに対して、利用者中心の介護の観点から、2018年10月8日、「高齢者介護の質と安全性に関する王立委員会」が設置され、2021年3月1日には「ケア、尊厳、そして尊重」と題する報告書がオーストラリア連邦議会に提出された(関連情報)。
この報告書の勧告を受けて、オーストラリア保健・障害者・高齢化省は、高齢者自身の権利を最優先する「権利ベース」のアプローチの導入により、高齢者が介護サービスの中心となり、そのニーズや選択、管理が尊重されるよう設計された「2024年高齢者介護法」を連邦議会に上程し、2024年11月25日に可決/成立した(関連情報)。同法は、2025年11月1日に施行される予定である。
図5は、2024年高齢者介護法の全体像を示したものである。
さらに2024年高齢者介護法では、既存のホームケアパッケージ(HCP)プログラムと短期リハビリ期ケア(STRC)プログラムに代わって、高齢者が自宅でより長く自立した生活を送れるように支援するための在宅支援(Support at Home)プログラムが導入されることになった。この在宅支援プログラムでは、従来の訪問介護サービスを統合し、新たな分類体系、公平な料金設定、早期介入への注力、複雑なニーズを抱える人々への高水準のケアなどを導入する予定である。
高齢者が在宅支援プログラムの対象として認定された場合、事業者と共有するための「決定通知」と個別支援計画が交付される。これには以下の内容が含まれる。
継続的に四半期ごとの予算が割り当てられている高齢者は、承認されたサービスのリストに基づいてサービスを利用することができる。高齢者本人は、独立した評価者と連携して、どのサービスをどのくらい(月当たりの時間数や単位など)利用したいかを決定する。また、利用者はいつでもサービス提供者と相談の上で、承認されたリストの中から受けるサービスの組み合わせを変更することができる仕組みになっている。
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