マトリックス細胞研究所と東京大学は、乳がんの精密切除を補助する磁気センサーを開発した。新しい種類の医療機器として、既に厚生労働省の承認を得ている。
マトリックス細胞研究所と東京大学は2025年6月17日、乳がんの精密切除を補助する磁気センサーを開発したと発表した。事前に超音波ガイド下で乳がん病巣に留置した磁性マーカーを、手術中に磁気センサーで検知することで外科医が病巣の位置を正確に把握できる。新しい種類の医療機器として、既に厚生労働省の承認を得ている。
同磁気センサーは、手術に先立ち、超音波画像のガイド下でがん病巣に留置された微小な磁性マーカーを探索するために使用する。
磁気センサーのヘッドには、ネオジム磁石とホール素子を内蔵しており、ネオジム磁石により磁性マーカーを磁化し、磁性マーカーから出る磁場をホール素子により検出する。磁気センサーのヘッドが磁性マーカーに接近すると、音と数値により知らせる仕組みだ。
ネオジウム磁石が発生する磁場に比べて磁性マーカーが生じる磁場は極めて微弱なため、単なる組み合わせではセンサーのダイナミックレンジが不足する。そこで、リング型磁石が作る磁場分布のゼロ点にホール素子を配置することで、室温で操作する磁場センサーを用いても十分な検知感度を得ることが可能になった。
磁石やセンサーの構造の最適化も進め、20mm以上の距離でも、微小な磁性マーカーを検出できることを示した。
乳房の組織は柔軟で、手術中に大きく変化する。特にしこりを形成しない非蝕知乳がんでは、がん病巣の正確な病巣を検知することは難しく、何割かの患者では術後にがんの取り残しが見つかっている。
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