藤田医科大学は、報酬が表情を変化させる神経メカニズムを明らかにした。報酬の予期時と獲得時では異なる顔運動が誘発されるが、どちらの場合も大脳皮質一次運動野が必要となることが分かった。
藤田医科大学は2023年8月3日、報酬が表情を変化させる神経メカニズムを明らかにしたと発表した。報酬の予期時と獲得時では異なる顔運動が誘発されるが、どちらの場合も大脳皮質一次運動野が必要となることが分かった。
今回の研究では、報酬に対して表れる顔運動の神経機構を明らかにするため、マウスの中脳腹側被蓋野(VTA)のドーパミン神経細胞を刺激した。その結果、ドーパミン神経細胞の活性化により、鼻やヒゲなどの顔の前部の運動が確認できた。
また、報酬に基づく学習タスクをマウスに実行させ、その時の顔運動を高速撮影して解析。報酬を予期した場合と獲得した場合で、誘発される顔運動が異なることが分かった。これらの顔運動は、VTAのドーパミン神経細胞から生じる信号回路の一部である側坐核のドーパミンD1受容体を介する信号経路と、D1受容体を必要としない信号経路でそれぞれ駆動していることが示唆された。
一方、顔運動の制御に関与する大脳皮質一次運動野を抑制すると、予測時と獲得時の両方に対応する顔運動が消失した。このことから、異なる2つの信号経路は、最終的にどちらも大脳皮質一次運動野が必要だと考えられる。この大脳皮質一次運動野から神経活動を記録してみると、予測時と獲得時の顔運動を表現する神経細胞は、それぞれ別に存在することも明らかとなった。
これらの成果により、高速撮影による顔運動の解析が、感情把握に有用である可能性が示された。今後、動物の感情の読み取りや各種神経疾患における診断技術の開発につながることが期待される。
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