情報通信研究機構と旭化成は、発光波長265nm帯の高強度深紫外LEDを搭載した鉄道車両用空気殺菌モジュールを開発した。静岡鉄道で運行中の鉄道車両に搭載し、従来技術と比べて40%以上の省電力化を達成している。
情報通信研究機構は2025年2月12日、旭化成と共同で、発光波長265nm帯の高強度深紫外LEDを搭載した鉄道車両用空気殺菌モジュールを開発したと発表した。静岡鉄道で運行中の鉄道車両に搭載し、従来技術と比べて40%以上の省電力化を達成した。
同モジュールは、車両連結部の上部(かもい)に設置して使用する。ウイルスを含む車両内の空気を吸収し、モジュール内で深紫外線を照射してウイルスを不活性化した後、清浄な空気を排出する。
発光ピーク波長265nm帯という最も殺菌効率が高い、高強度深紫外LEDチップをマルチチップ実装し、流入する空気の方向と対応するように配置。これにより、空気中のウイルスと深紫外光の相互作用を最大化した。
試験用ウイルスを用いて、25m3の空間を浮遊するウイルスへの不活性化性能を評価した。その結果、従来の低圧水銀ランプを使用した参照用モジュールに比べ、99.9%のウイルス不活性化に要する消費電力を40.7%削減できた。
実際に旅客運転している静岡鉄道の車両で1カ月間の試験運転を実施したところ、同モジュールの安全かつ安定な動作を確認した。また、500W出力の深紫外LEDを複数搭載したモジュールでは、106分の稼働で99.9%のウイルスを不活性化した。水銀ランプと比較すると、不活性化に要する時間が43.6%短縮している。
水銀ランプを光源とする殺菌に比べて人体や環境への負荷が低く、省電力のため、公共交通機関や医療施設など、空気感染リスクの高い環境への採用が期待される。今後、関連企業との連携を含めた取り組みを進め、社会実装を目指す。
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