産業技術総合研究所と就実大学は、繊維からシートまで多様な形状の基材に対して、短時間かつ非加熱で抗ウイルス薬剤成分を直接固定するナノコーティング技術を開発した。マスクや医療用装具などに適用できる。
産業技術総合研究所(産総研)は2025年2月17日、繊維からシートまで多様な形状の基材に対して、短時間かつ非加熱で抗ウイルス薬剤成分を直接固定するナノコーティング技術を開発したと発表した。就実大学との共同研究による成果だ。
今回開発した技術は、産総研の独自技術となる紫外線照射支援を利用した光表面化学修飾(PSM:Photochemical Surface Modification)を活用した表面改質技術だ。紫外線を照射することで、基材の励起と改質薬剤の分解または励起を室温下で同時に誘起でき、共有結合を介して導入官能基化薬剤を簡便にバインダーレス固定できる。
まず、PETフィルムなどシート状のポリマー材料やポリエステル繊維布、綿繊維布を基材とし、抗ウイルス薬として機能するクロルヘキシジン(CHX)をコーティングする。その後、1分程度紫外線を照射すると、CHX成分の抗ウイルス効果を維持したまま基材表面に直接分子固定できた。
抗ウイルス性試験の結果、インフルエンザウイルスに対して繊維製品で99.9%以上、PETフィルムで99.99%以上の高い不活性化率を示した。また、PETフィルムに関しては、透明性が維持されるため意匠性への影響がないこと、実際に使用して抗ウイルス効果が発表時点で2カ月間持続していることを確認している。
開発した抗ウイルス性ナノコーティング技術は、繊維を含め幅広い種類の基材へ適用可能だ。また、薬剤が溶出することなく抗ウイルス効果を発現するため、粘膜や傷口に長時間接触する用途にも応用できる。将来的にはマスクや医療用繊維部材、装具、一般服飾などへの適用が期待される。
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