イチから全部作ってみよう(22)シーケンス図によるモデリングで全体像を把握する山浦恒央の“くみこみ”な話(191)(1/3 ページ)

ソフトウェア開発の全工程を学ぶ新シリーズ「イチから全部作ってみよう」。第22回は、シーケンス図を使用したモデリングによってECサイトの登場人物と処理の流れを示し、開発対象を洗い出す工程について説明する。

» 2025年07月22日 06時00分 公開

1.はじめに

 山浦恒央の“くみこみ”な話の連載第170回から、入門者をターゲットとして、「イチから全部作ってみよう」というシリーズを始めました。このシリーズでは、多岐にわたるソフトウェア開発の最初から最後まで、すなわち、要求仕様の定義、設計書の作成、コーディング、デバッグ、テスト、保守までの「開発フェーズ」の全プロセスを具体的に理解、経験することを目的にしています。

⇒連載「山浦恒央の“くみこみ”な話」バックナンバー

 今回は、シーケンス図を使用してECサイトの開発対象を把握します。

2.図を使って考えよう

2.1 大会社の社長になったらどうする?

 もし、「1000人規模の会社に社長として就任することになった」ときのことを想像してください。1000人規模というと、日本の中でもかなり規模の大きな会社(いわゆる大企業)です。その社長に就任した場合を考えてください。

 その時、最初にやるべきことの一つが、全体像を表す組織図を確認することです(図1)。

図1 図1 組織図の例[クリックで拡大]
組織図 ※写真はイメージです

 図1は、一般的な組織図の例です。企業には、「設計部」「企画部」「人事部」などのさまざまな部門が存在し、各部門の中に「部長」「係長」「一般社員」などの役職が存在します。また、指示系統は、社長が大方針を示し、それを各部の部長に伝達します。部長はその方針を部内の課長へ伝え、課長は現場の社員に具体的な業務として落とし込みます。

 このように、組織図を見ると、どのように指示が伝わり、誰がどんな役割を担っているのかがひと目で分かります。複雑に見える大企業の組織でも、図で整理すれば全体の流れと構造を把握できるのです。

2.2 複雑な情報を整理するモデリング

 ソフトウェア開発の世界でも、複雑な仕様を文章だけで整理することも可能です。しかし、全体像を把握し、関係性を明確にするには、図にまとめる方が分かりやすく、効率的です。この作業を「モデリング」といいます。

 モデリングとは、物事を整理し、図や構造に落とし込むことで、複雑な内容を理解しやすくする手法です。例えば、システム設計図、クラス図、シーケンス図などがこれに相当します。モデルとして表現することで、他の人に説明しやすくなったりして、自分の頭の中を整理できます。

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