車載マイコンで快走のインフィニオン、なぜRISC-Vを採用するのか組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは、足元の車載マイコンの事業状況や、新たに採用を決めたオープンソースのプロセッサコアであるRISC-Vの開発体制などについて説明した。

» 2025年04月16日 06時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2025年4月14日、東京都内で会見を開き、足元の車載マイコンの事業状況や、新たに採用を決めたオープンソースのプロセッサコアであるRISC-Vの開発体制などについて説明した。RISC-Vの開発では、ティア1サプライヤーであるボッシュ(Robert Bosch)や車載マイコンで競合のSTマイクロエレクトロニクス、NXPセミコンダクターズなどと出資する合弁会社「Quintauris(クインタウリス)」を通じて、車載分野におけるRISC-Vの採用拡大を目指す方針である。

 インフィニオン テクノロジーズ ジャパン 代表取締役社長 オートモーティブ事業本部 事業本部長の神戸肇氏は「インフィニオンは車載半導体でグローバルトップシェアを堅持している。北米市場で第2位になったことで、主要な5つの地域でシェア1位もしくは2位となっている。車載半導体事業は、世界全体で年間約9000万台という自動車市場を取り合うことになるが、このように各地域で1位もしくは2位のシェアを獲得することで、ある地域の自動車市場が減速したとしても他地域で売り上げを補完できる」と語る。

インフィニオン テクノロジーズ ジャパンの神戸肇氏 インフィニオン テクノロジーズ ジャパンの神戸肇氏。世界主要5地域の車載半導体シェアでシェア1位もしくは2位を獲得したことを強調した[クリックで拡大]

 インフィニオンの2024年の車載半導体世界シェアは13.5%となったが、この数字をけん引したのが好調な車載マイコンだ。2024年の車載マイコン世界シェアは32.0%で、2位の競合の23.4%と比べて8.6ポイントの差をつけた。これは、前年からさらに2.7ポイント引き離しており好調さがうかがえる。

インフィニオンの車載半導体と車載マイコンの世界シェア インフィニオンの車載半導体と車載マイコンの世界シェア[クリックで拡大] 出所:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン

 現在、インフィニオンの車載マイコンは独自コア「TriCore」を用いる「AURIX」、Armコアを採用する「TRAVEO」と「PSOC」から構成されている。神戸氏は「これらの強力なポートフォリオに追加する形で、顧客により多くの選択肢を提供していくことを目的に車載マイコンで新たにRISC-Vを採用することを決めた。当社は、RISC-Vを自動車業界のオープンスタンダードとすべく市場をけん引していく」と強調する。

 神戸氏は、2025年4月8日に発表したマーベル(Marvell Technology Group)の車載イーサネット事業の買収についてもコメントした。「ドイツ、イタリア、台湾の当局の承認を待っているところで、3〜6カ月後には買収が完了するだろう。SDV(ソフトウェアデファインドビークル)への移行を加速するという観点で、車載マイコンにおけるRISC-V採用と共通する取り組みになる」(同氏)という。

インフィニオンはマーベルの車載イーサネット事業を買収する インフィニオンはマーベルの車載イーサネット事業を買収する[クリックで拡大] 出所:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン

3つのポートフォリオで車載マイコンの出荷実績は総計十数億個に

 インフィニオンの車載マイコンのポートフォリオは、先述した通りAURIX、TRAVEO、PSOCから構成されている。車載向けでの出荷実績は、AURIXが約7億個、TRAVEOが1億個以上、PSOCが2億個以上で、総計十数億個に上る

インフィニオンの車載マイコンの強みと3つのポートフォリオ インフィニオンの車載マイコンの強みと3つのポートフォリオ[クリックで拡大] 出所:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン

 AURIXは、主にパワートレインやADAS(先進運転支援システム)、シャシー&セーフティーなど、高いリアルタイム制御性や高いレベルの機能安全規格対応が求められる用途に向けた製品だ。1999年にインフィニオンが独自に開発したTriCoreをベースに2014年から量産を開始した。2014年には第2世代の「TC2x」、2018年には第3世代の「TC3x」を量産しており、第4世代の「TC4x」は間もなく市場投入される計画である。

 TRAVEOとPSOCは、インフィニオンが2020年4月に買収したサイプレス(Cypress Semiconductor)の製品である。TRAVEOは、Armの「Cortex-M4/M7」をベースにメーターやボディ系のシステム向けに展開しており、現行の「TRAVEO T2G」が最新となる。PSOCは、主に産業機器や民生品向けに展開しているマイコンブランドではあるものの、センサーやタッチパネルの制御などの用途では車載で採用されている。

3つのポートフォリオのカバー領域 3つのポートフォリオのカバー領域[クリックで拡大] 出所:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン
3つのポートフォリオのアプリケーションと機能 3つのポートフォリオのアプリケーションと機能[クリックで拡大] 出所:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン
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