CES 2026でも過熱する「フィジカルAI」、バズワードを脱して本格的なトレンドへMONOist 2026年展望(1/2 ページ)

2025年後半から日本国内でもバズワードとして取り上げられてきた「フィジカルAI」。その主戦場は日本が得意とする自動車とロボットであり、2026年はこのフィジカルAIが本格的なトレンドとして定着していく年になるだろう。「CES 2026」でもフィジカルAIに向けた新製品の発表が相次いだ。

» 2026年01月07日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 AI(人工知能)技術を大きく進展させた生成AIの登場を経て、2024年から大きな注目を集めるようになったのがAIエージェント(Agentic AI)だろう。複数の生成AIの連携によって、人が細かく指示しなくても目標を与えるだけで自律的に業務を遂行することから、さらなる自動化への貢献に期待が集まっている。

 ただし、AIエージェントの動作はスマートフォンアプリやWebサイト、業務システムなどデジタル世界で完結するものがほとんどだ。これに対して、現実世界にある機械や装置などの高度な自律化をAIエージェントと同様に生成AIを用いて実現しようとするフィジカルAI(Physical AI)への注目が急速に高まっている。

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フィジカルAIの主戦場は日本が得意とする自動車とロボット

 フィジカルAIという言葉は、AI技術の進化をけん引してきたNVIDIAが提唱したものだ。そして同社がフィジカルAIの代表的なアプリケーションとして挙げたのが自動運転車と汎用人型ロボットのヒューマノイドである。2025年は、自動運転技術において従来のルールベースのアルゴリズムとは異なる、生成AIを活用したE2E(End-to-End)方式が実用化の端緒に着くとともに、ヒューマノイドについても中国を中心に急速に技術が進展した1年となった。

NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏はAIエージェントのさらなる進化形としてフィジカルAIを提唱した NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏はAIエージェントのさらなる進化系としてフィジカルAIを提唱した[クリックで拡大] 出所:NVIDIA

 これら自動車とロボットは、日本が現在も世界市場で高い競争力を持つ数少ない産業分野である。今後も競争力を維持するためにはフィジカルAIに取り組まないわけにはいかないこともあってか、2025年後半からは日本国内で“フィジカルAI”はバズワードと化した。中国メーカーのヒューマノイドが多数展示された同年12月の「2025国際ロボット展」を経てフィジカルAIに対する熱気はさらに高まっている。2026年も日本国内におけるフィジカルAI熱はさらに過熱しそうだ。

「2025国際ロボット展」における国のロボットメーカーUnitree Roboticsのヒューマノイドロボット「G1」によるキックボクシングの実演デモ[クリックで再生]

インテルとAMDは最新アーキテクチャをフィジカルAI向けにも展開

 現在開催中の「CES 2026」(2026年1月6〜9日、米国ネバダ州ラスベガス)でもフィジカルAI向けの新製品の発表が相次いでいる。特に、現在のPC向けプロセッサ市場で大きな存在感を放っているインテルとAMD、そしてクアルコム(Qualcomm)が、フィジカルAIへの対応で求められる組み込み機器向けの製品ラインアップに、最新のPC向けプロセッサと同じアーキテクチャを適用することで高いAI処理性能を実現していることは注目に値する。

 インテルはCES 2026に向けて、これまで「Panther Lake」の開発コードで呼ばれてきた「Core Ultra シリーズ 3 プロセッサー(以下、Core Ultra シリーズ 3)」を正式発表した。同社の最新プロセスである「Intel 18Aプロセス」を採用した初の製品であり、AI処理性能についてもCPUとGPU、AIアクセラレータであるNPUを合わせて最大180TOPSを確保している(NPU単体では50TOPS)。これまで、AMDやクアルコムに対してAI処理性能で後れを取ってきたインテルだが、今回のCore Ultra シリーズ 3で対抗できる状況を整えたといえるだろう。

 そして、Core Ultra シリーズ 3は同社として初めて、PC向けと並行して、拡張温度範囲、確定的性能、24時間365日の信頼性を満たす組み込み/産業用途向けの認証を取得したことを発表している。Core Ultra シリーズ 3搭載PCの発売が2026年1月27日に対して、組み込み/産業用途向けのCore Ultra シリーズ 3を搭載する組み込みボードなどのエッジシステムを同年4〜6月に提供開始するというスケジュールは、インテルのフィジカルAI市場に対する強い期待の表れともいえるだろう。

インテルはロボティクス向けレファレンスボードも用意 インテルは「Core Ultra シリーズ 3」を組み込み/産業用途向けに展開するのに併せて、ロボティクス向けレファレンスボードも用意していく方針である[クリックで拡大] 出所:インテル

 AMDもCES 2026に合わせて、高いAI処理性能を特徴とする「Ryzen AIシリーズ」をベースとする組み込み機器向けプロセッサ「Ryzen AI Embedded P100/X100シリーズ」を発表した。CPU「Zen 5」、GPU「RDNA 3.5」、NPU「XDNA 2」と最新のPC向けプロセッサ製品と同じアーキテクチャを採用している。NPU単体のAI処理性能は、Core Ultra シリーズ 3と同じ50TOPSを確保している。

AMDが発表した「Ryzen AI Embedded P100/X100シリーズ」の外観 AMDが発表した「Ryzen AI Embedded P100/X100シリーズ」の外観[クリックで拡大] 出所:AMD

 これまでAMDの組み込み機器向け製品と言えば、旧ザイリンクスのFPGAやプログラマブルSoCの採用実績が先行してきたイメージが強い。しかし、Zenアーキテクチャの世代になってからはx86系CPUのポートフォリオの拡充を続けており「Ryzen Embedded」「EPYC Embedded」に加えて、RyzenとプログラマブルSoC「Versal」を統合した「AMD Embedded+」を投入するなどラインアップの拡充が続いている。フィジカルAIというパラダイムシフトに合わせて、PCやサーバ市場と同様にシェア拡大を目指す意気込みは強い。

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