PLDベンダとして業界第2位、日本では首位のアルテラ。日本法人は早くから独自の戦略で日本を重要なマーケットに育ててきた。さらにデバイス4本柱が確立し、それを補完するソフトウェア製品も充実している。
世界的に見ると、現時点におけるPLD(Programmable Logic Device)のトップベンダはザイリンクスである。ただし、日本国内に限ると、アルテラの方がシェアを確保している。同社の2005年の売上高は約11億2400万ドル。そのうち日本が25%(約2億8100万ドル)を占める(注1)。一方、ザイリンクスの同年売上高は約15億7300万ドル、日本の構成比は14%で約2億2000万ドルだ(注2)。
エレクトロニクス関連の外資系ベンダは、全社売り上げの10〜15%を日本で稼ぐのが一般的である。アルテラの25%は極めて高い割合であり、本拠地・北米と同じだ。同社日本法人、日本アルテラの堀内伸郎氏(マーケティング部ディレクター)は「米国本社は早くから日本を重要市場と見て、日本のユーザーの声を吸い上げてきた。地道な活動の積み重ねが良い結果をもたらしているのではないか」と話す。
同社が年1回開催するプライベートカンファレンス「PLD World」は、2006年11月の開催で13回目を迎えるが、数年前まで日本単独のイベントだった。つまり、日本法人は90年代初頭のPLD黎明期から、率先して啓蒙活動を続けていたわけだ。また、国内主要ユーザーに対しては、アルテラ側の製品ロードマップとユーザー側の製品開発計画を擦り合わせ、アルテラのデバイス・サービスに対する要望を聞くミーティングを設定しているという。こうした活動を通じて、約2200社という顧客ベースを作り上げてきた。この2〜3年は特に勢いが加速しており、日本法人は人員が倍増、現在は100人体制となっている。
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2000年前後に起こった「通信バブル崩壊」を乗り越え、アルテラのビジネスは加速を続けている。「2002年以降に発表されたFPGA製品に限れば、売り上げは業界トップ」(堀内氏)という。産業別の売り上げでも、以前の通信機器中心から脱却。通信機器(42%)、産業機器(32%)、民生デジタル機器(16%)、コンピュータ/ストレージ(10%)と分散している。
確かに、アルテラは幅広いニーズに応えられる製品ラインアップを持っている。
というデバイス4本柱に加え、組み込み用途に向けたソフトコアプロセッサ「Nios II」、開発ソフトウェア「Quartus II」などがある。
CPLDは、アルテラが圧倒的な強みを長年維持している分野である。2004年春に発表した最新版の「MAX II」についても、「CPLDといいつつ、他社の低コストFPGAに劣らない性能を持つ」という。MAX IIは実際、従来製品からアーキテクチャを刷新し、FPGAと同じLUT(Look Up Table)方式を採用した。その結果、従来比で性能を2倍、集積度を4倍にアップ。一方で消費電力を10分の1に抑え、CPLDの可能性を広げた。MAX IIは、東芝が2006年夏に発売したワンセグ対応デジタルオーディオプレーヤ「gigabeat V30T」(放送信号処理の一部に活用)などにすでに採用されている。
低コストFPGAのCycloneは成長性が高く、アルテラが力を入れている分野だ。コストパフォーマンスの高さから量産機器への搭載が期待でき、特に薄型テレビやDVDレコーダなど民生デジタル機器での採用が多いという。
2005年から出荷を始めた90nm(ナノメートル)プロセスの「Cyclone II」は、集積度を従来比で約3.5倍に高め、ASIC置き換えを本格的に狙ったものだ。LE(Logic Element)数が4608〜6万8416個(ASICなら5万5000〜82万ゲートに相当)の7品種をラインアップ。コストの目安は、40万ゲート規模で22ドル(25万個出荷時)。堀内氏は、「Cyclone IIは垂直的な立ち上げを実現できた。量産が期待できるデジタルオーディオプレーヤでも数件が試作まで進んでいる」としており、搭載機器が今後続々と市場に登場してきそうな気配である。
MAXにしてもCycloneにしても、日本企業が世界市場をけん引する民生デジタル機器が成長源となっており、ここでも日本法人の活躍があるようだ。アルテラの売上高を産業別で見ると、民生デジタル機器の割合は16%だが(これも2000年初頭と比べるとほぼ倍増)、日本に限れば倍近い32%になる。
Cyclone IIファミリの最新製品(2006年夏に追加)は、デバイス起動時間を短縮する「Fast On」と呼ぶ独自機能を備えており、50ミリ秒での起動が可能とされている。既存のCyclone IIファミリの一部でも、同機能を付加した拡張版を提供する。「カーナビなど車載機器分野のユーザーから強い要望があり、新製品をファミリに加えた」と、堀内氏は明かす。カーナビといえば、日本メーカーの独壇場である。車載機器市場でも日本法人が先頭に立って開拓してゆくのだろう。
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