アイシン精機はなぜイノベーションに注力するのか:モノづくり最前線レポート(3/3 ページ)
MONOist 既存領域に対する危機感は高まっているということでしょうか。
江口氏 新興国メーカーの成長や競合関係の変化、技術領域の変化などを考えれば、既存領域の価値は当然下がっていく。また国内の自動車販売台数なども長期的に見れば下がることは避けられない。その中で、グローバル競争をしていく時に、同じ価値しか提供できなくなれば、より固定費の低い企業が勝つのは当然のことだ。そのためわれわれとしては新しい価値を常に模索し、提供し続けていかなければならない。さまざまなトレンドを見つつ、新たな価値がどこにあるのかを見極めていく必要がある。
MONOist イノベーションセンターに定められた数値的な目標というのはあるのでしょうか。
江口氏 特に定量的な目標というのは決まってはいないが「早期の事業化」については要求されている。個人的には「ニーズがある」と考えてプロトタイプを世に問うてから5年以内には事業としての道筋を立てなければならないと考えているので、それを目標に取り組む。今回発表したパーソナルモビリティについても、ユーザーニーズがどこにあるのかというのを把握しつつ、モノとしての中身を磨き上げ、5年以内の事業化を目指したい。
MONOist このパーソナルモビリティ以外にも進んでいるプロジェクトというのはあるのでしょうか。
江口氏 既にプロトタイプとして形になりそうなモノが3つくらいある。どこに絞り込んでいくかというのをアンテナを張りながら作り込んでいく。これらの形になりつつあるプロジェクトについても「5年」を目標に事業化を目指していく。
MONOist オープンイノベーションで社外の力を使う取り組みについてはどのような形で進めているのでしょうか。
江口氏 大学や研究所、デザイナーやクリエーターなどをコンセプトの初期段階から呼び込んで進めていく。これらのビジネスマッチングやテクノロジーマッチングなどのワークショップをサポートする企業などもあり、これらの企業に支援を求めながら、最適な形を模索している。
アイシン精機のパーソナルモビリティ開発発表の様子
グローバル化により変化と競争が激化する中、製造業には自ら新しい価値を生み出すイノベーションを持続的に生み出すことが求められています。既存の価値観を破壊する「イノベーション」を組織として生み出すにはどうすればいいのでしょうか。「イノベーションのレシピ」特集では、成功企業や識者による事例を紹介しています。併せてご覧ください。
- ロボット技術応用、4つのモードに変形する近未来の足
アイシン精機と千葉工業大学 未来ロボット技術研究センターは、4つの形態に変形する、パーソナルモビリティ「ILY-A」を発表した。ロボット技術の応用により、人や障害物を認識して自動停止する機能も備える。
- 柏から世界へ! 三井不動産がオープンイノベーション拠点を設立
三井不動産は、柏の葉スマートシティ(千葉県柏市)の中核街区において、オープンイノベーション拠点として「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」を開業する。同施設内にはコワーキングスペースなどの他、3Dプリンタやレーザーカッターを備えた「KOILファクトリー」を用意する他、“エンジェル投資家”からベンチャー企業が投資を受けられる仕組み作りなども行うという。
- 日本よ これが世界だ! GEとローカルモーターズが新たなモノづくり基盤を始動
米国GEは、オープンコミュニティによりモノづくりを行う米国ローカルモーターズと提携し、新たなモノづくりプラットフォーム「FirstBuild」を立ち上げた。同プラットフォームにより、アイデアやモノづくりのノウハウ、各種リソースを持つ人々によるコミュニティを形成し、オープンコミュニティ上でのモノづくりを行う計画だ。第一弾は「インドアバーベキューセット」をテーマとし、2014年内の販売を目指す。
- トヨタが10年をかけて進化させたパーソナルモビリティ、「i-ROAD」が市街を走る
トヨタ自動車が、「第83回ジュネーブ国際モーターショー」で公開した、都市内部の近距離移動に用いる超小型電気自動車(EV)「i-ROAD」は、同社が10年かけて進化させてきたパーソナルモビリティの最新コンセプトだ。市街を走行するi-ROADのイメージ映像が、Youtubeで公開されている。
- 電子技術で自動車の基本機能と付加価値を高める
自動車は、単なる移動手段から、移動可能な住空間の1つとなっている。このために、「環境」、「安全」、「快適」への要求に応えつつ、健康やライフスタイルといった住生活を理解して、そのつながりを深めて行くことも重要となる。アイシン精機を核とするアイシングループは、自動車部品を事業基盤に、住生活関連商品やエネルギー関連商品、バイオ関連機器へとその領域を拡大してきた。自動車部品も生活関連事業の一環と位置づけ、機械工学や電子工学に加え、人間工学や生理学も探求し、その技術を商品に反映している。アイシン精機の常務役員を務める加藤喜昭氏に、自動車部品における電子化の役割やHEV/EV用部品への取り組みなどを聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.