農林水産省と復興庁が公募した「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」の研究事業者として富士通が採択された。クラウドやセンシング技術などのICTを活用した、新しい農業・漁業モデルの確立を目指す。
富士通は2012年4月18日、東日本大震災の被災地における農業・漁業の復興を目的に農林水産省と復興庁が公募した「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」において、同月16日に委託先研究事業者として採択されたことを発表した。
今回採択されたのは、同事業の10の公募テーマのうち、農業・農村型実証研究の「土地利用型営農技術の実証研究(個別技術要素型研究/網羅型研究)」と、漁業・漁村型実証研究の「地域資源を活用した省エネ・省コスト・高付加価値型の水産業・水産加工業の実用化・実証研究」である。
これを受け、同社は今後3年間、主に東北地方に拠点を置く研究機関や生産者・団体、加工会社などと連携・協力し、センシング技術などのICTを活用した農業・漁業の生産性向上に向けた実証研究を実施する。
具体的には、「農業クラウドなどを活用した営農・経営支援に関する研究実証」と「水産クラウドを活用した商品表示プラットフォーム実証研究」を進める。また、併せて農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センターが主導するコンソーシアムにメンバーとして参画し、「農業クラウドのデータプロトコル標準化(センサーとクラウド間のデータプロトコルの標準化)」にも取り組む。
以下に、農業クラウドなどを活用した営農・経営支援に関する研究実証と、水産クラウドを活用した商品表示プラットフォーム実証研究の概要を示す。
本研究実証は、大規模な水稲生産などの土地利用型農業において、クラウド技術、センサーネットワーク、携帯端末を活用するものである。これにより、従来、経験と勘を中心に行われていた営農のマニュアル化や標準化を図り、農作業従事者の作業スキルの差を最小化し、農作物の付加価値向上を目指す。さらに、農場ごとの作業時間、投入資材コストの見える化を通じて、適切なコスト管理、経営意思決定支援などを行う計画だという。
なお、同社は山梨県のスイートコーン栽培においてもICTを活用した実証実験を行っている(関連記事)。
本研究実証は、産地側において、産地や魚の鮮度、脂質などの品質情報をクラウド上に登録し、スーパーなどで消費者がスマートフォンからその情報を確認・利用できるなど、魚価の向上、産地のブランド化につながる要素技術の実証研究を行うもの。また、クラウド上に蓄積された消費者の閲覧情報を解析することにより、産地側に有益な消費動向のフィードバックも可能となり、付加価値情報の流通検証が行えるとする。
本研究実証の共同研究機関として、水産総合研究センター 中央水産研究所と富士通アドバンストエンジニアリングが参加する。前者は魚の鮮度・品質情報などを測定する機器と水産クラウドの連携に関する研究実証支援を、後者はFeliCaチップを活用するためのアプリケーション技術の研究実証支援を行うという。
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