コンデンサーを用いた実験回路で微分積分の本質に迫る【積分編】今岡通博の俺流!組み込み用語解説(15)(1/2 ページ)

今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラム。第15回は、前回の微分に続き、コンデンサーを用いた実験回路を使って積分の本質に迫る。

» 2025年07月10日 06時00分 公開
[今岡通博MONOist]

はじめに

 前回記事に引き続き、微分積分が苦手だった方々を対象に、コンデンサーと1万円台のオシロスコープを使って積分の本質に迫ります。数式は一切出てこないので、数学が苦手という方でも気軽に読んでいただける内容になっています。

⇒連載「今岡通博の俺流!組み込み用語解説」バックナンバー

コンデンサーとは

 コンデンサーは、電気を通さない物質(誘電体)を2枚の金属板(電極)で挟み込んだ電子部品です。電気を蓄えたり、直流成分を通さなかったりといった働きをします。詳しくは本連載第11回をご覧ください。

積分とは

 積分は、微分とちょうど逆の考え方で、「ある量の変化を積み重ねて全体を求めること」と言えます。もう少し分かりやすく言うと、「小さなものをたくさん集めて、合計の量や面積、体積などを計算すること」です。

 積分のアイデアの原型は、古代ギリシャの時代にまでさかのぼることができます。

 エウドクソスとアルキメデス(紀元前4世紀〜3世紀頃)は、「取り尽くし法(Method of Exhaustion)」という手法を用いて、曲線で囲まれた図形の面積や、球や円すいといった立体の体積を計算しました。これは、対象の図形をより簡単な図形(例えば、小さな三角形や長方形)で埋め尽くしたり、外から囲んだりして、それらの面積や体積を足し合わせ、その近似の精度を限りなく高めていくことで、真の値を求めるという考え方です。現代の積分の考え方に非常に近いものがありました。アルキメデスは、放物線と直線の間の面積を求めるなど、驚くべき成果を残しています。

 17世紀後半になると、英国のアイザック・ニュートンとドイツのゴットフリート・ライプニッツが、それぞれ独自に現代の微分積分学の基礎を確立しました。彼らの功績が積分の歴史において最も重要視されます。

 ニュートンは、物理学(特に万有引力の法則や運動の法則)の問題を解決するために、自身で「流率法」と呼ぶ手法を開発しました。これは、現在でいう微分と積分に相当するもので、変化の概念と、その変化を積み重ねて全体を求めるというアイデアを結び付けました。彼は研究成果をまとめた著書「プリンキピア」にその考えを記しました。

 ライプニッツも同時期に、より抽象的な数学的観点から微分積分学を構築しました。彼は、現在私たちが使っている積分記号「∫」(Sを伸ばしたもの。Summation=合計のSに由来)や微分記号「d/dx」などを考案し、体系的な記号法と計算規則を整備しました。これにより、微分積分の手法が広く普及し、発展する土台が築かれました。

 ニュートンとライプニッツの間では、どちらが先に発見したかという「先取権論争」が起こり、当時の数学界に大きな影響を与えました。現代では、両者がそれぞれ独立に微積分を発見したという認識が一般的です。

積分を理解するための例

 積分について幾つか具体的な例で考えてみましょう。

クルマの移動距離

 前回記事の微分では、クルマのスピードを例に「一瞬の速さ」について説明しました。積分は、その「一瞬一瞬の速さ」を時間で積み重ねて、合計の移動距離を求めるようなものです。

 例えば、あなたのクルマが毎秒どれくらいの速さで進んだかを記録していくとします。

 最初の1秒で5m、次の1秒で7m、その次の1秒で6m……といったように、短い時間の移動距離をどんどん足し合わせていくと、最終的に「合計でどれくらい移動したか」が分かりますよね。

 これが積分がやっていることです。連続的に変化する速さ(微分の結果)を、時間という区間で全て足し合わせることで、最終的な移動距離(積分の結果)を導き出します。

貯金箱のお金

 貯金箱にお金をためていくことを想像してみてください。

 毎日、異なる金額を入れるとします(例えば、100円、200円、50円など)。「毎日入れたお金を全て足し合わせたら、貯金箱にいくら入っているだろう?」と考えるのが積分です。

 たとえ毎日入れる金額が変わるとしても、最終的な合計額は、それらを積み重ねていくことで求められますよね。

不規則な形の土地の面積

 例えば、直線で囲まれた長方形のような土地の面積は、縦と横の長さの積から簡単に求まります。でも、もしその土地の形が曲がっているなど、複雑だったらどうでしょうか?

 このような不規則な形の面積を求めるには、土地を非常に小さな長方形や正方形に細かく分割していきます。それらの小さな長方形1つ1つの面積は簡単に求められますよね。そして、その小さな長方形の面積を全て足し合わせていくと、元の不規則な形の土地の「おおよその」面積が分かります。

 この「細かく分割して足し合わせる」という操作を、分割を限りなく小さくしていく(無限に細かくする)ことで、より正確な面積を求めるのが積分です。

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