今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラム。第11回は、組み込み技術者やデジタル技術者が知っておくとよいであろうコンデンサーの活用術を紹介する。
今回は、組み込み技術者やデジタル技術者が知っておくとよいであろうコンデンサーの活用術を紹介します。一切数式は使わないので、そのあたりはご安心を(?)。
コンデンサーは、2枚の導体板で絶縁体を挟み込んだ素子です。この導体板に電圧を印加すると、電荷が蓄えられます。そして、電圧が取り除かれると、蓄えられた電荷が放出されます。
コンデンサーに電流を流すと、電圧は時間とともに上昇します。この電圧の変化は、コンデンサーの容量と抵抗の値によって決まります。
デジタル回路において、コンデンサーはノイズ抑制や電源の安定化など、さまざまな役割を果たしています。以下に、代表的な活用法を解説します。
デカップリングコンデンサーは、ICやLSIなどの電子部品の電源ピンとグランド間に接続されるコンデンサーです。
コンデンサーは電荷を蓄える性質を持っています。デカップリングコンデンサーは、ICが動作する際に発生する瞬間的な電流変化に対して、その電荷を出し入れすることで、電源電圧の変動を抑制します。
デカップリングコンデンサーとしての働きは主に2つに分けられます。
1つは電源電圧の安定化です。ICが動作すると電源電流は瞬間的に変化します。このとき、デカップリングコンデンサーが電荷を放出したり蓄えたりすることで電源電圧の急激な変動を吸収します。
もう1つは高周波ノイズの低減です。デジタル回路では、スイッチング動作などを行う際に高周波ノイズが発生します。デカップリングコンデンサーは、この高周波ノイズをグランドに逃がすことで、ノイズの伝播を抑制します。
バイパスコンデンサーは「パスコン」という略称で呼ばれることが多いです。デジタル回路において、電源ラインに並列に接続され、高周波ノイズをグランドに逃がすことで回路の安定性を高める重要な部品です。
デジタル回路では、トランジスタのスイッチング動作などにより、高周波のノイズが発生します。コンデンサーは、高周波に対しては低いインピーダンスを示します。そのため、発生した高周波ノイズは、電源ラインを通らずに、コンデンサーを介してグランドに流れやすくなります。高周波ノイズがグランドに逃がされることで、電源ラインの電圧変動を抑制します。
また、ICを動作させる際には、瞬間的に大きな電流を必要とする場合があります。このとき、電源ラインに長く曲がりくねった配線を用いていると、コイルと同じ動作を起こしてインダクタンス成分が発生して急激な電流の変化についていけず、電圧降下が起こります。そこで、バイパスコンデンサーに蓄えられた電荷が放出されることで電圧降下を抑制すれば、安定した電源電圧を供給できます。
デジタル回路では、クロック信号やデータ信号など、さまざまな高周波信号が存在します。これらの信号が電源ラインに混入すると、他の回路にノイズとして影響を与え、誤動作の原因となります。バイパスコンデンサーを使えば、これらの高周波ノイズをグランドに逃がしてノイズの伝播を抑制できます。
コンデンサーは、特定の周波数の信号を通過させたり遮断したりすることができます。一般的に、高周波信号は、コンデンサーの両極板間の絶縁体を短絡しているかのように振る舞うので簡単にコンデンサーを通過します。一方、低周波信号は、コンデンサーに電荷を蓄える時間が十分にあるため、コンデンサーを通過するのが難しくなります。
ローパスフィルターは、高周波ノイズを除去し低周波の信号を通過させます(図1)。
活用例としては、オーディオ回路での高音成分のカット、デジタル回路でのクロック信号のノイズ除去、電源回路でのリップルノイズの除去などが挙げられます。
なお、OSCは信号発生源となるオシレーター(英語で発振回路の意味)の略です。
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