インフィニオンテクノロジーズ ジャパンは、生成AIの登場により高性能化への要求が大幅に高まっているAIデータセンター向け電力供給システムの市場動向と同社の取り組みについて説明した。
インフィニオンテクノロジーズ ジャパンは2025年7月10日、東京都内で会見を開き、生成AI(人工知能)の登場により高性能化への要求が大幅に高まっているAIデータセンター向け電力供給システムの市場動向と同社の取り組みについて説明した。2027〜2029年ごろには1MWに達する見込みの1サーバラック当たりの電力消費量に対応するため、シリコンパワー半導体だけでなくSiC(シリコンカーバイド)デバイスやGaN(窒化ガリウム)デバイスなどを最適に組み合わせたソリューションを提供していく方針だ。
現在、半導体市場のけん引役となっているのがAIデータセンターだ。学習のためにより多くのデータ量を求める生成AIの登場により、AIデータセンターに求められる計算処理能力は指数関数的に増加している。AIモデルの学習や推論に用いられる最新のGPU1個当たりの消費電力は現時点で1kWに達しており、間もなく2kWを超える見込みだ。インフィニオンテクノロジーズ ジャパン バイスプレジデント 経営戦略室 室長 兼 社長補佐の後藤貴志氏は「第3次AIブームの端緒となった2012年以降、AI用GPUの消費電力は3.4カ月ごとに倍増している。また、世界全体の電力需要に占めるデータセンターの割合も、2022年の約2%から2030年には約7%まで上昇すると予想されている。そして、データセンターは米国など一部の国と地域に集中しており、その設置場所が偏在していることも大きな課題となっている」と語る。
AIデータセンターによる電力需要の増大は各国政府に課題を突き付けている。先進国で老朽化が進む送電網への負担がより大きくなり、生成AIの急速な進化に合わせて電力消費量とCO2排出量が増大している。GPT-3の学習にかかる電力が1300MWhだったのに対し、GPT-4の学習では5万MWhに達している。この5万MWhの電力は米国家庭4800世帯の年間電力消費量に相当し、CO2排出量換算では2万2000トンとなる。後藤氏は「AIデータセンターは高い処理性能と消費電力によって総所有コストの増大しており、企業の事業活動に不可欠になりつつあるが故にダウンタイムが発生すると大きな損害をもたらす。このような事態を避けるため、より高い堅牢性と信頼性が求められている。AIデータセンターと関わる電力フローも効率が高いとはいえず、電力効率をさらに高めていかなければならない」と課題を指摘する。
より多くの電力を必要とするAIデータセンターの市場拡大は、パワー半導体大手であるインフィニオンにとって事業成長の機会となっている。2025年度の同社におけるAIデータセンター/AIサーバ関連の売上高は約6億ユーロであり、さらに今後2年以内に10億ユーロに達する見込みだ。「当社の製品を使えば、AIデータセンターで課題となっている電力効率、電力密度、堅牢性を向上できる。エネルギー効率が8〜10%改善され、電力密度は30〜60%向上できる。堅牢性についてもクラス最高であり、垂直統合された製造フローによる品質管理による信頼性も高い。もし世界中のデータセンターでインフィニオンの製品を使用すれば、年間2200万トンものCO2排出量の削減が可能だ」(後藤氏)。
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