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» 2008年09月22日 00時00分 公開

Linux基盤「ALP」でケータイOSのエコシステムを構築組み込み企業最前線 − ACCESS −(2/2 ページ)

[石田 己津人,@IT MONOist]
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ケータイ向けトータル・ソフトウェア・ソリューションに活路を見いだす「ALP」

 ここで疑問がわくだろう。LiMoが技術的に優れたものだとすれば、ALPは“どこ”で差別化をしていくのか。標準性やコストを考えれば、端末メーカーはALPよりも、LiMoモジュールを自社端末に統合するのではないか……。

 標準性を重視するLiMoが、規定する範囲をOSとミドルウェアフレームワークに限定しているのに対し、ALPはプラットフォームといっても、実際はトータルなソリューションであり、レイヤや機能のカバー範囲が広い。NetFront Browserをはじめとする汎用的なネイティブアプリケーションも含み、Palmアプリケーションを稼働させる仮想マシンも搭載する。「LiMoでベース部分は共通化しつつ、ALPとしては端末開発に必要なトータル・ソリューションを提供していく。SDKがすでにそろっているのもALPの強みだ」と、鎌田氏はいう。

 つまり、ALPの活路を開くのが、“高機能版LiMo Platform”としての位置付けなのだ。


ALPのソフトウェアスタックとLiMo Platformのカバー領域 図2 ALPのソフトウェアスタックとLiMo Platformのカバー領域

 もう一つ見逃せないのが、オペレータ・端末メーカーとのエコシステム構築である。ACCESSはオペレータと協業し、ALP(LiMo Platform準拠プラットフォーム)上で稼働する専用アプリケーションパッケージ「オペレータパック」の受託開発、あるいは共同開発を進めている。現在、協業が公式発表されているのは、ドコモとオレンジの2社である。

 ドコモ向けオペレータパックでは、iモードなどのアプリケーション群で構成。つまり、ALP+ドコモ向けオペレータパックの組み合わせにより、FOMA端末に標準で載るほとんどのソフトウェアスタックを提供する。2009年後半に登場するN(NEC製)、P(パナソニック モバイルコミュニケーションズ製)端末から採用される見通しだ(なお、現行のFOMA「906i」「706i」シリーズでもN、P端末は、すでにLiMo準拠となっている)。

 これがなぜエコシステムになるかといえば、ドコモで考えると分かりやすい。まず、ドコモとしては海外メーカーとの関係を強化できる。海外の端末メーカーは、LiMo Platformに準拠した自社プラットフォーム(もしくはALP)の上へドコモ向けオペレータパックを搭載すれば、グローバル仕様のW-CDMA端末をFOMA端末へ流用できる。従来のようにドコモ独自のプラットフォーム上で一からアプリケーションを実装するのに比べれば、ハードルはかなり下がるはずだ。一方、NEC、パナソニック モバイルコミュニケーションズは、ドコモ向けに開発したFOMA端末のオペレータパック部分を別のオペレータパックに切り替えるか、その部分だけを新たに開発すれば、海外オペレータ向けに仕立てられるわけだ。

ビジネス機会が無尽蔵な「NetFront Browser」

 一般的に海外では、オペレータと端末メーカーは水平分業だが、このエコシステムは特にオペレータの関心が高いという。「海外のオペレータは、モバイルインターネットが盛んになったとき、自身が単なる伝送路になり、グーグルやアップルにサービス収入を奪われるのを恐れ、ドコモのように独自サービスを強化しようとしている」(鎌田氏)からだ。ACCESSは現在、ドコモ、オレンジ以外のLiMo加盟オペレータとの交渉を進めているという。「ALPとオペレータパックの組み合わせを搭載した最初の端末は、1年以内に登場するだろう」(鎌田氏)という。

 ともあれ、多額の先行投資を行ってきたALPがACCESSの今後を左右するが、同社にはNetFront Browserという成功体験がある。携帯電話向けブラウザにおいて、ACCESSは押しも押されもせぬ世界的なトップベンダ。「iPhone効果で世界的にモバイルインターネットが注目され、高性能ブラウザの需要が高まっている」(鎌田氏)と成長にさらに拍車が掛かる。なお、NetFrontシリーズの世界累計搭載台数は現在6億を超えているという。

 さらに2008年7月からは、ウィジェット実行環境「NetFront Browser Widgets」の提供も開始した。第1号ユーザーは「ウィルコム ガジェット」を展開するウィルコム。同時に自らコミュニティサイト(ベータ版)も立ち上げ、Windows Mobile端末向けにプレーヤ、コンテンツを配布する。国内ではワンセグ用BMLブラウザもACCESSの独壇場になっているのを見ても、ブラウザというキーアプリを持つ強みは大きい。これから携帯電話が日本並みに高度化する海外において、NetFront Browser関連のビジネス機会は無尽蔵といってもよいだろう。

 こうしたNetFront Browser事業とこれから離陸するALP事業が結び合わさったとき、ACCESSのビジネスはどう大化けするか。同社の動向から目が離せない。


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