NVIDIAは、組み込み機器向けAIモジュール「Jetson Orin Nano」の開発者キットについて、AI処理性能が従来比で70%増となる67TOPSに向上した「Jetson Orin Nano Super開発者キット」を発表した。価格も従来の499米ドルから半額となる249米ドルに値下げする。
NVIDIAは2024年12月17日(現地時間)、組み込み機器向けAI(人工知能)モジュール「Jetson Orin Nano」の開発者キットについて、AI処理性能が従来比で70%増となる67TOPSに向上した「Jetson Orin Nano Super開発者キット」を発表した。価格も従来の499米ドルから半額となる249米ドルに値下げする。なお、既存のJetson Orin Nanoの開発者キットについても、Jetson Orin Nano Super開発者キットと併せて発表されたソフトウェアアップデートを適用することで同様のAI処理性能向上が可能になる。
同社 創業者兼CEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏は、Jetson Orin Nano Super開発者キットの発表に合わせて、コロナ禍の際に自宅のキッチンからオンラインで基調講演を配信した“キッチンキーノート”を模したYouTube映像を公開。以前に“世界最大のグラフィックスボード”を取り出した台所のオーブンから、今回は手のひらサイズのAIコンピュータとなるJetson Orin Nano Super開発者キットを取り出して見せた。
Jetson Orin Nano Super開発者キットは、Jetson Orin Nanoのメモリ容量8GBモデルと、レファレンスキャリアボードなどから構成されている点では既存のJetson Orin Nano開発者キットと比べて大きな変更はない。Jetson Orin Nanoの8GBモデルも、CPUとしてArmのアプリケーションプロセッサ「Cortex-A78AE」を6コア、GPUとしてAmpereアーキテクチャに基づく1024のCUDAコアと32のTensorコア、128ビットのLPDDR5メモリを8GB搭載するというハードウェア構成は同じだ。
ただし、CPU最大周波数を1.5GHzから1.7GHz、GPU最大周波数を625MHzから1050MHzに高めており、その結果としてAI処理性能(INT8)が40TOPSから約70%増の67TOPSに向上した。生成AIモデルの推論実行への影響が大きいメモリ帯域幅も、68GB/sから約1.5倍の120GB/sに広げた。消費電力については、従来は最大15Wとなっていたが、今回の性能向上に合わせて最大25Wに増えている。この消費電力の増加に対応する冷却ソリューションの採用により、開発者キットとしての外形寸法は幅100×奥行き79×高さ21mmから同103×90.5×34.77mmに大型化した。
今回の性能向上はソフトウェアアップデートによって実現したものだ。そのため、既存のJetson Orin Nanoの開発者キットについても、Jetson Orin Nano Super開発者キットと併せて発表したソフトウェアアップデートを適用することで同様の性能向上を実現できる。
これらの性能向上によりJetson Orin Nano Super開発者キットは、LLM(大規模言語モデル)やVLM(視覚言語モデル)、ViT(ビジョントランスフォーマー)といった生成AIモデルの推論処理性能についても従来比で約70%向上させられるという。
AI処理性能向上の恩恵は、Jetson Orin Nanoの8GBモデル以外のSOMでも得られる。Jetson Orin NXの16GBモデルは100TOPSから157TOPS、Jetson Orin NXの8GBモデルは70TOPSから117TOPS、Jetson Orin Nanoの4GBモデルは20TOPSから34TOPSに性能が向上している。
なお、日本国内におけるJetson Orin Nano Super開発者キットの販売は、菱洋エレクトロとマクニカが2024年12月18日から開始する予定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.