このような特長を持つAnswers Anywhereだが、これまで本格的な採用としては、海外で企業アプリケーションと連携したモバイルアプリケーション、国内でBI(Business Intelligence)アプリケーションのUIに採用されたぐらいだったが、組み込み向け版「Answers Anywhere Embedded」のビジネスが国内で盛り上がってきた。その理由は、車載用途のニーズが出てきたからだという。
Java SE/EEに対応した標準版Answers Anywhereのサブセットとして提供されているAnswers Anywhere EmbeddedはC++のAPIにより、組み込みアプリケーションに自然言語・対話型のUIを統合できる。標準でARM系プロセッサ上で動作するWindows CE/Windows Mobileに対応し、50kbytesのROM、100kbytesのRAM上という小さなフットプリントで稼働する(フットプリントは、22個のエージェントを使った検索アプリケーションでの測定値)。
早川氏は「組み込み分野では、車載、ホームサーバ、携帯電話という3つのターゲットがあるが、自動車業界からの引き合いが強い」と話す。車載といっても範囲は広いが、インフォテイメント、テレマティクスと呼ばれる分野がメインである。実際、米iAnywhereとトヨタIT開発センター(トヨタ自動車、デンソー、KDDIなどが共同設立した自動車向けITのR&D会社)は2007年11月、テレマティクス分野においてAnswers Anywhereを利用した音声認識・自然言語UIに関する特許を米国で取得している。
周知のとおり、CD/DVD、携帯プレーヤのデータ、カーナビの地図情報だけでなく、トヨタ「G-BOOK」や日産「カーウイングス」のようなテレマティクスサービスでネットワーク越しに取得した交通情報、ニュース、メールなどクルマが持つコンテンツは増加の一途をたどっている。
しかし、“運転中の操作”を前提にしなければならないなど、自動車特有の制約条件は変わらない。膨大なコンテンツを要領よく引き出すには、手を使うメニュー操作ではなく、自然な話し言葉で操作できるUI、いうなれば“音声ポータル”が求められるのは当然だろう。こうしたニーズに応える手段として、Answers Anywhereが有力視されているという。
「Answers Anywhereがなくても音声ポータルは実現できるが、車種ごとに違う機器構成、サービスに合わせて作り込まなければならず、膨大な開発要員が必要になる。そこで、Answers Anywhereのようなミドルウェアが有効になる。Answers Anywhereなら車種ごとのエージェントのネットワーク構成、エージェント個々のルール、情報を変えるだけでよく、再利用性が高い。つまり、音声ポータルの“開発環境”となる」(早川氏)。
Answers Anywhereでは、エージェントネットワークを開発・テストするためにGUIベースの統合開発環境「Agent Network Development Environment(以下、ANDE)」が標準提供されているが、アイエニウェアでは、ANDEのカスタマイズ、対応プラットフォーム拡張、ドライバ開発などにより、自動車メーカーを支援していく構えだ。早川氏は「組み込み分野の需要は、日本が圧倒的に先行しているため、グローバルでもわれわれが主導的な立場にある。実際、ソースコードも国内に置いている」と打ち明ける。
自動車メーカーがAnswers Anywhereを正式採用するとなれば、搭載車の登場を待たずして、アイエニウェアの技術支援ビジネスは拡大するだろう。また、実際に自動車に搭載された暁には、自然言語・対話型UIの実現手段としての実効性の高さにお墨付きが与えられ、情報家電や携帯電話への波及も見込めるだろう。そうなれば、アイエニウェアががぜん、組み込み分野で頭角を現しそうだ。
ちなみに、2008年5月14日から16日まで開催される「第11回 組込みシステム開発技術展(ESEC2008)」でAnswers Anywhereのデモが行われるという。自然言語・対話型UIとは何たるかを実際に見られる・触れられるよい機会になるのではないだろうか。
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