東京大学 情報基盤センターと筑波大学 計算科学研究センターの共同組織である最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)は、最新のスパコン「Miyabi」を報道陣に公開した。
東京大学 情報基盤センターと筑波大学 計算科学研究センターとが共同で運営する最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)は2025年1月15日、東京大学柏キャンパス(千葉県柏市)において会見を開き、同キャンパス内に設置した新たなスーパーコンピュータ(スパコン)「Miyabi(みやび)」が同年1月14日に本稼働を開始したと発表した。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)による科学技術計算の高度化や、後述する「AI for Science」の加速を狙う。
Miyabiは、JCAHPCが2016〜2022年に運用していた従来のスパコン「Oakforest-PACS(OFP)」と比べて、理論ピーク性能でおよそ3倍、電力あたりの性能ではおよそ9.5倍を達成。スパコンの性能ランキングであるTOP500において、国内の研究用システムとして理化学研究所の「富岳」に次ぐ第2位となる46.80PFLOPSを記録した。
ハードウェア的には、GPUとArmのCPUを一つのモジュール上に並べたNVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip×1120基の「Miyabi-G」(理論ピーク性能78.8PFLOPS)と、Intel Xeon CPU MAX 9480 プロセッサー×380基の「Miyabi-C」(同1.3PFLOPS)で構成されている。Miyabi-Cはx86プロセッサ用に書かれたプログラム向けであり、メインとなるのはMiyabi-Gである。
会見では、JCAHPC施設長(筑波大学 計算科学研究センター長 教授)の朴(ぼく)泰祐氏があいさつに立ち、JCAHPCの概要について触れた後、Miyabiについて説明した。
「Oakforest-PACSはメニーコアのインテルXeon Phi 7250(第2世代のKnight Landing)を採用した野心的なシステムであり、当時のナショナルフラグシップだった理化学研究所の『京』を上回る性能を実現するなど多くの成果を生み出してきた。一方、世界的な潮流として、現在のスパコンのほとんどがGPUを中核に構成されている。絶対性能や電力当たり性能を追求するにはやはりGPUが不可欠と考え、MiyabiではNVIDIA製GPUを採用し、国内トップクラスの性能を実現することを目指して設計した」(朴氏)
併せて、Miyabiの運用予定期間は2030年末までの6年間であることと、6年間のリース費用、運用費用、人件費などの総額は71.5億円であることを明らかにした。費用負担や計算リソースなどは、東大が3分の2、筑波大が3分の1の比率で案分される。
Miyabiの利用分野について、JCAHPC研究開発部門 部門長の中島研吾氏(東京大学 情報基盤センター 教授 スーパーコンピューティング研究部門 大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻 大学院工学系研究科電気系工学専攻)は、「工学、モノづくり、流体、構造、宇宙物理、大気や海洋などの地球物理、材料、素粒子、生物化学などに活用していただきたい。特に、最近はあらゆる分野で予測や解析にAIが使われるようになっているので、AIによって計算科学を加速する『AI for Science』を推し進めてより高度な計算を目指すことはもちろん、AIを使った医用画像処理などの新しいユーザーも獲得していく」と述べる。東京大学においては、同校が持つ大気海洋研究所と地震研究所でのさまざまな研究や解析、筑波大学においては宇宙物理や素粒子の研究を中心に活用される見込みだ。
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