ユーザーはLinuxから戻ってきた「RTOS“Nucleus”を汎用OSへ」組み込み企業最前線 − メンター・グラフィックス −(2/2 ページ)

» 2007年07月02日 00時00分 公開
[石田 己津人,@IT MONOist]
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※本稿は2007年7月時点の内容となります。メンター・グラフィックスの最新の取り組みについては、組み込み企業最前線(30)「メンターは組み込みソフトにコミットする」を参照のこと(2009/12/22)。



UI開発を効率化する新提案

 そしてメンターは、Nucleusの可能性をさらに広げるため、新しいソリューションを2006年末から展開し始めた。コンシューマ機器向けアプリケーション基盤「Inflexion Platform」である。Nucleus・ミドルウェア上でのアプリケーション開発を支援するため、デジタルカメラ・テレフォニー・VoIPなど機器別の機能パックとUI開発ツール「Inflexion Platform UI」を提供するもの。現在、UI開発ツールが先行リリースされている。

Inflexion Platform UIの構造 図3 Inflexion Platform UIの構造。XMLベースのUIテンプレートとC言語統合APIを持つUI生成エンジン(組み込みコンポーネント)からなる

 コンシューマ機器では、アプリケーションがリッチになるにつれて、開発全体に占めるUI開発の比重が高まっているが、Inflexion Platform UIは、XMLベースのUIテンプレートを提供し、これをカスタマイズすることで操作性に富んだ「メニューシステム」形式のUIをコーディングレスで作成できるという。そしてInflexion Platform UIは、C言語統合APIを持ち、各アプリケーションからデータを動的に読み込んで、画面を生成する。つまり、各アプリケーションとUIの結合度が弱いため、UIを柔軟に開発、再利用できるわけだ。1つのアプリケーションにエンドユーザーが任意に選べる複数UIを持たせることも簡単だろう。Inflexion Platform UIは発表されたばかりの技術であるが、そのコンセプトは魅力的である。


 いずれにしても、メンターとしては、リアルタイム制御に特化した“軽量RTOS”というNucleusの位置付けをマルチメディアアプリケーションも扱える“高機能OS”へ高めたい考えであり、そのための環境を整えつつある。最近では、欧州のSTマイクロエレクトロニクスとの協業により、携帯電話向けで実績のあるSTのアプリケーションプロセッサ「Nomadik」にNucleusを対応させ、ベースバンド処理のみならず、アプリケーション処理も担える点をアピールしている。日本では、やはり“高機能なRTOS”化を目指したITRONから「T-Engine(T-kernel)」が誕生し、最近になり、カーナビゲーションシステムなどでの採用例も出てきた。Nucleusの動向も気になるところだ。

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