富士通は、医療/ヘルスケア分野における事業方針についての説明会を開催し、今後5年間でビジネス規模を倍増させる目標を明らかにした。電子カルテシステム事業の強化やスパコン技術などを活用した新規ビジネスの創出を狙う。
富士通は2014年3月18日、医療/ヘルスケア分野における事業方針についての説明会を開催し、2013年度1075億円(見込み)の医療/ヘルスケアビジネス売上高を5年後の2018年度に2000億円へ倍増させる目標を明らかにした。電子カルテシステムや治験業務システムといった既存ビジネスのさらなる強化とともに、スパコン技術など要素技術を生かした心臓シミュレーションシステムや細胞診断システムといった新規ビジネスの創出を図り、事業の拡大を狙う。
富士通は、医療/ヘルスケア市場を成長市場の1つとして位置付け、従来以上に医療/ヘルスケアでのビジネス強化を加速させるため、2013年末に「未来医療開発センター」を新設した。この未来医療開発センターは、社長直轄の社内横断組織で、社内に点在する医療/ヘルスケア向け研究開発機能を統合する。その上で、社外の大学、研究機関などとの連携強化を図り、新技術開発、強いては、新ビジネス創出を迅速、効率的に実施していく役割を担う。今後、5年間で、約1000億円の医療/ヘルスケアビジネス売上高の上乗せを狙うが、そのうち、700億円分は、この未来医療開発センターが関係するビジネスから生み出す計画。今後の富士通の医療/ヘルスケアビジネスの中核を、未来医療開発センターが担うことになる。
未来医療開発センターの具体的な役割として、5つの項目を掲げる。
これらの役割は、全て医療/ヘルスケア分野での富士通の強みを生かして実現していく。富士通 執行役員の合田博文氏は、「電子カルテシステムや治験業務システムで先行しており、富士通は病院のデータ統合のためのプロセスをしっかり把握できている点が強みだ。これに加えて、スパコン技術などの多くの要素技術を持つ点も医療/ヘルスケア分野での強みだ」とし、従来のビジネス実績と要素技術を加味した新ビジネス創出を未来医療開発センターで展開していく。
例えば、「国内で35%以上のトップシェアを獲得している」という電子カルテシステムでは、同じく「国内で圧倒的なシェア」という治験業務システムと連携させ治験業務をさらに効率化させるシステムの構築や、昨今活発化しているゲノム医療の情報と連携するなどの次世代電子カルテシステムの実現をめざすという。
要素技術応用では、スパコンを活用し、分子シミュレーションを行い、新規医薬品開発の効率化に向けた技術開発を進める他、同じくスパコン上で、心臓の胎動を心筋レベルから精密に再現する心臓シミュレータの開発を実施。心臓シミュレータは既に、心臓のポンプ機能の改善を図る心臓再同期療法(CRT)におけるペースペーカーの埋め込みを各個人の心臓の状態に合わせて最適化し、ペースペーカーの効能を最大化する「テーラーメード型医療」での応用などが検討されている。
なお、富士通では、医療/ヘルスケア事業の拡大に向けて、2014年度から2018年度までの5年間に「300億円程度の投資を実施する」としている。
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