筆者はマレーシアに在留していたという「ひいき目」があるのかもしれませんが、総合的に判断して、マレーシアは製造業の生産シフト先として、優れた投資環境を有していると思います。むしろ周辺諸国に比べて、優れた点も少なくありません。
共通語の流通 マレー系、中国系、インド系と多民族国家であるマレーシアは、公用語であるマレー語以外にも、英語、中国語が広く使われています。マレー語はインドネシア語と同じです。よって、マレーシア人は、多くの国・地域の人々と、ほぼネイティブな会話が可能です。
近代的な法体系 イギリスの植民地であったことから、一般的に「Common Law」と呼ばれる法律体系が確立している。多くの発展途上国では、外国企業、外国人に不利な法律&運用であるのに対し、マレーシアの法律体系は非常に公正なものです。
整備された金融システム また、もう1つのイギリス植民地の影響ともいえるのが、しっかりした金融システムです。国内金融機関の提供している金融サービスは国際水準にあると思います。どこかの国のように、外国送金への規制などはありません。
流動性の高い労働力 労働力の問題についても、さまざまな対策が採られているようです。東マレーシア(ボルネオ島側の領土)*や周辺諸国からの労働力の「輸入」が促進されています。1つ面白い話があります。マレーシアの公共バス運転手の大多数はインドネシア人です。一方、シンガポールのバス運転手の多くはマレーシア人です。それぞれ、自国より収入の良い国に出稼ぎに行っています。公共機関の運転手が外国人の出稼ぎというのは、ちょっと日本では考えられない現象です。
*首都クアラルンプールは西マレーシアにあります。東マレーシアまでは飛行機で2時間以上かかります。
今回のコラムのタイトルにもあるように、マレーシアというのは、東南アジアの中でもユニークな面を有しています。通常、発展途上国は国内の南北問題(都市部 vs.地方の収入格差)を抱えています。もちろん、マレーシアでも収入格差はあるのですが、他の発展途上国と比べると、その差は小さいものです。マレーシアではかなりの田舎に行っても、各家に自家用車として、PROTON、もしくはPERODUA*を見かけることが多くあります。他の国――タイ、インドネシア、フィリピンでは絶対に見ることのできない光景です。
*ダイハツ工業が資本参加している。
もはや、自動車関連=タイ拠点という構図は揺るがせないものになってしまった感があります。しかし、他の製造品目であれば、「皆と同じ」ではなく、さまざまな選択肢の中から、独自の判断で進出先を選定することが、進出企業&進出先にとって、中長期的に良い結果を生むのではないでしょうか。生産拠点としてのマレーシアをもう少し見直してもよいのではないかと筆者は思っています。
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次回のコラムでは、最近注目を浴びている「東南アジアの大国インドネシア」をお伝えします。
(株)DATA COLLECTION SYSTEMS代表取締役 栗田 巧(くりた たくみ)
1995年 Data Collection Systems (Malaysia) Sdn Bhd設立
2003年 Data Collection Systems Thailand) Co., Ltd.設立
2006年 Data Collection Systems (China)設立
2010年 Asprova Asia Sdn Bhd設立- アスプローバ(株)との合弁会社
1992年より2008年までの16年間マレーシア在住
独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。
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