チャイナプラスワン戦略の中、新たな中核拠点としてASEANが注目を浴び、特にタイへの進出などが目立つが、タイでは既に「タイプラスワン」の動きが出始めているという。なぜ今「タイプラスワン」が進むのか。ASEAN事情に詳しい筆者が解説する。
「Thai Plus One(タイプラスワン)戦略」は、タイを中心に聞く新しい言葉です。もちろん、中国以外の選択肢を探る「Chine Plus One(チャイナプラスワン)」の亜流なのですが、このプラスワンの対象となっているのが、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーと言ったメコン川流域の国々です。
なぜ、今タイ以外の選択肢を探る戦略である「タイプラスワン戦略」が関心を集めているのでしょう。今回から数回に分けて、「タイプラスワン戦略」と言う視点から、これらのメコン地域の国々を取り上げていきたいと思います。
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まずは大きな枠組みから、東南アジア諸国連合(ASEAN)が向かっている方向を見てみましょう。
ASEANが進めている自由貿易協定(AFTA)の最終ステップとして、2015年に東南アジア経済統合が実現します。AFTAに基づく域内の関税撤廃は2段階で実施されています。まず2010年にASEAN先進国であるシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ブルネイの6カ国間で実施されました。2015年には、メコン地域のベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーの4カ国が対象となります。これにより、名実ともにASEANという一大市場が形成されることになります。
2015年のASEAN経済統合におけるメリットには以下の3つが考えられます。
ASEANの持つ大きな潜在力は、経済発展段階の異なる複数の国で構成されていることに起因しています。国民1人あたりのGDPが日本を上回るシンガポールのような先進国から、メコン地域の国々に代表される開発途上国です。結果、ASEANは人口6億人を超える巨大消費者市場と、低賃金の労働力市場と言う2つの異なる側面を併せ持っています。
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