早くから製造拠点として日系企業が進出してきたインドネシアだが、現在は人口増加や中産層の成長などで、再び各社が生産能力を拡大する動きが目立ってきた。タイ駐在の藤井氏による本連載だが、今回はインドネシアに出向き現地の状況を紹介する。
好況が続くインドネシアでは、2012年に最低賃金が50%アップしたという。そのため、インドネシアの日系製造業の工場では、生産効率の向上が喫緊の課題になってきている。今回は、当社アスプローバの生産スケジューラを継続的に活用してもらっている工場と、現状に問題を抱え継続利用が難しくなってきた工場を数工場訪問した。
インドネシアは、温暖な気候と恵まれた雨量などから、米の3期作および3毛作が可能なのだという。そのため「いつでもモノは作ることができる。今回がダメでも次があるさ」というモノづくりに関する思考が根付いており、どうしても納期や精度などへの意識が甘くなりがちになる。
アスプローバが扱う生産スケジューラにおいて、納期を意識しないフォワードスケジューリング(スケジュールを時間の流れに沿って組んでいく方法)は、生産効率向上に結び付けるのは難しく、納期回答くらいにしか利用できない。そのため現地の人々の考え方に沿った形で、どうやって生産効率向上への意識を生み出していくか、ということが重要になってくる。
今回訪問した企業のうち、問題なく継続的に生産スケジューラを活用する工場は「リバースイノベーション(新興国で生まれたイノベーションを先進国で普及させる)」のような形で当社製品の導入が進んだ。当初は中国工場に導入し、その成果から日本の工場に逆輸入。さらにそれをテンプレート化した段階でグローバル工場に展開した。つまり中国工場での実績がインドネシアでの利用につながっているということだ。
同工場では「リスケジューリングはシフトごとにしたいが、1日1回にしている」という。多毛作で「失敗してもキャッチアップ可能」という発想のインドネシア人に対しては「最初に立てたスケジュールを動かさず、遅れを認識してもらうことで意識を変えていく必要がある」と同工場担当者は話している。
そもそも環境が厳しい中国の工場などと比べて、親日的な東南アジア各国の日系工場では、日本人の管理職の現地作業員に対する比率が圧倒的に少ない。
このような環境下で生産スケジューラを利用し、現場と管理事務所の予実管理の見える化ツールとして利用する工場が多かったことに驚いた。ガントチャートにより、言葉や数字ではなく、一目で分かるビジュアルなツールとして活用されており、見える化ツールとしての有用性が証明されたように感じた。また予想以上に現場のコミュニケーションに役立っていたこともうれしい誤算だった。
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