株価の乱高下など、景況は不透明な状況が続くが、安倍政権発足以降、企業活動は活発さが増してきた。活性化の動きは新たな設備投資につながっているのだろうか。2013年6月の工場投資に関する発表を振り返ってみた。
新たな工場投資で圧倒的に目立つのがASEANへの投資だ。生産の中心だった中国で人件費の高騰や日本との関係悪化などの問題が発生し、生産地を分散する動きが活発化。その移管先としてASEANへの注目度は高まっている。また、ここ数年はASEANではタイが自動車や精密機械の一大生産拠点として投資が集中していたが、ベトナムやマレーシア、インドネシアなど、周辺地域にも投資が進んでいることも特徴的だ(関連記事:チャイナプラスワン戦略におけるタイ、変化の兆しが)。
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マツダは、マレーシアで生産委託するイノコム社からマツダ車専用車体工場を取得し、現地組み立て体制を強化することを発表した。2013年中に所有権を取得し、生産計画や品質管理などに柔軟に対応できる体制を築く方針だ。
また車体工場と同じ敷地内には2013年5月下旬から車両組み立て工場も建設中で、2014年春の稼働を目指している。これにより現在、イノコム社で組み立てている「CX-5」の生産を新工場に移管する方針だという。これらの体制構築に合計で約30億円を投資する。生産体制は、将来的には年間2万台規模の生産を目指すという。
JFE商事は、インドネシアにおける鋼材加工拠点において第2工場を建設し大型レべラー1基を導入することを決めた。稼働時期は2014年4月頃を予定しており、第2工場建設後のインドネシア拠点の加工能力は、年間約9万7000トンから約15万8000トンに拡大する予定だ。
またJFEスチールは、インドネシアで初となる自動車用溶融亜鉛メッキ鋼板ラインを建設することを決めた。インドネシアで今後も自動車工場新設などが相次ぐことから、自動車用高級鋼板需要の拡大による需要に応えるためだ。総投資額は約300億円で、生産能力は年間約40万トン。稼働記事は2016年3月だという。
伊藤忠商事と雪印メグミルクは、2012年から合弁で設立した現地法人によるプロセスチーズの製造工場が完成したと発表した。日系企業としては初めてインドネシアに設立するプロセスチーズ工場だとし、生産能力は年間約2000トンだという。
大日本印刷(DNP)は、日用品や食品向けにプラスチックフィルム製軟包材を生産するベトナム工場が完成した。投資額は約40億円。東南アジア諸国で生産する企業向けに職本のフィルム製パウチやシャンプーの小分け袋などの製品を供給していくという。
日清製粉グループ本社と日清製粉はベトナムのホーチミン市近郊に現地法人を設立し、調理加工食品(パスタソースなどレトルト食品)の生産工場を建設することを決めた。国内およびベトナム市場への製品供給を行う計画だ。資本金は約8億円で、2014年秋に工場を稼働させる予定だ。
米コカ・コーラは、ミャンマーでの現地生産を60年ぶりに開始。今後5年間で総額約200億円の投資を行い、生産能力の増強、販売と流通を含む物流の拡充、マーケティング体制の改善、人材育成などを行っていく。
理想科学工業は、タイにデジタル印刷機のハードウェアの自社生産工場を建設することを決めた。従来は貸工場での生産だったが、生産拠点の最適化を進めるために、自社生産へと移行する。建設費用は約8億2500万円で、2014年3月に完成予定だという。
三菱ガス化学は、タイに電子材料の生産工場を建設。2013年末に稼働を開始することを発表した。銅張積層板およびプリプレグを月産25万m2生産する。
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