ASEAN内の製造拠点に「タイプラスワン」の動きが高まる中、9000万人の大規模市場を抱えるベトナムに期待が集まる。しかしベトナムにはまだまだリスク要因が多いという。ASEAN事情に詳しい筆者が解説する。
製造業にとって役立つASEANの現状を紹介してきた連載「知っておきたいASEAN事情」ですが、第14回から、「タイプラスワン(Thai Plus One)」をテーマに、タイからの移転先として注目を集めているASEAN各国の状況をお伝えしています。
タイプラスワン戦略とは、ASEANの中心基地であるタイだけで事業を完結させることが人件費高騰や政情不安などでリスクになりつつあるため、タイ以外の拠点を設けようという動きや戦略のことです。今回は過去に「チャイナプラスワン」をテーマに「ベトナムはチャイナプラスワン戦略の選択肢なのか」取り上げたベトナムを、今度は「タイプラスワン」の観点から取り上げます。
本題に入る前に、ちょっと面白い調査結果を紹介します。2013年7-9月期に、国際協力銀行が日本の製造業企業を対象に実施したアンケートの中から、「中期的(今後3年程度)に有望と考える事業展開先国・地域」(複数回答可)と言う質問に対する回答ベスト10です。
その他の東南アジア諸国では、第11位がフィリピン(8%)、第12位にマレーシア(7.6%)、第16位シンガポール(3.9%)、第17位カンボジア(2.5%)、第20位ラオス(1.8%)という結果になっています。
第1位がインドネシアというのは、ちょっと意外な結果ではないでしょうか。インドネシアが支持された理由、今後の課題を見て行きましょう。
インドネシアが有望とされた理由
インドネシアの課題
また現在、日系企業の進出が続くタイが、意外と低い順にとどまっています。その理由としては、「労働コストの上昇」「他社との厳しい競争」「管理職クラスの人材確保が困難」「技術系人材の確保が困難」などが課題として挙げられています。
さて、今回のコラムの主役であるベトナムは第5位というそれなりの結果になっています。プラス材料としては「今後の現地市場成長性」「安価な労働力」「優秀な人材」などがあります。一方マイナス材料としては「インフラ未整備」「法制運用が不透明」「管理職クラスの人材確保が困難」「労働コストの上昇」「他社との厳しい競争」などが挙げられています。
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