実はASEANの動向は中国と密接にリンクしている!? 今回は周辺国に大きな影響を与えている中国でどのようなことに気を付けて事業計画を進めていくべきかという点について解説します。
製造業にとって役立つASEANの現状を紹介してきた連載「知っておきたいASEAN事情」ですが、前回から切り口を変えて、ASEANと切っても切れない関係である中国の現状についてお伝えしています。
中国、ASEANともに製造業の海外生産拠点として欠かせない存在であり、それぞれの関係性は、チャイナプラスワンやタイプラスワンといわれる動きや世界情勢とともに、“世界の工場”としての立場が行き来するような状況になっているように見えます。日本企業にとっても両地域の生産拠点をどのように運営していくかは大きなポイントになっていますが、今回は特に中国において、どのようなことを意識して事業プランを描くべきかという点について紹介したいと思います。
中国人民銀行(中央銀行)は2014年度の国民総生産(GDP)の成長率が7.4%となる見解を示しています。この数字は1990年度に示した3.8%以来の低調な数値です。これを受け、日本国内では中国経済の先行きを悲観する論調の報道が目立ちます。また、その背景には、雪解けムードはあるにせよ、反中感情があることが垣間見えます。
ちなみに、1990年度の中国GDPは2兆元弱、2013年度は57兆元であり、23年間で約30倍の規模に成長したことになります。成長率は低下傾向ですが、世界第2位の経済大国になった中国が、今後も年率10%以上の高度成長を続けるのはむしろ“おかしな話”といえるのではないでしょうか。シャドーバンキング、不動産バブルなど、経済成長を妨げる危険な問題を内包しているのは事実ですが、日本国内の論調はこうしたマイナス要因の評価が大き過ぎるように感じています。10%台から7%台に低下したとはいえ、世界第2位の経済大国がいまだに年7%の経済成長を維持していることはある意味驚異的な状況であり、中国にはまだまだ大きな可能性があるといえるのではないでしょうか。
現在、全世界で人口1000万人を越える都市が10個存在しているといいます。その内の6都市が中国にあります。また中国には142もの都市が人口100万人を超えているといいます。ご存じのように、2000年代初頭の経済開放政策への転換以降、広州、上海といった沿海部都市を中心に地域経済が大きく成長し、現在その方向は内陸部都市に向かっています。そこには、数え切れないほどの人口100万人以上の「大都市」が存在しています。人口100万都市は経済成長する過程でさまざまな内需を創出します。高速鉄道&高速道路の整備、市内の地下鉄建設、住宅開発、大型商業施設開発など、インフラから消費財まで、あらゆるモノに需要が存在しているといえるのです。
幾つかの地方都市では、加熱した不動産投資から大規模集合住宅が乱立し、需要を大きく上回る供給過多となっているのは事実です。しかし、これはそのまま不動産バブルの破綻につながるというものではなく、一時的な需給バランスの崩れだと見るべきでしょう。今後、内需が増加すれば解消される可能性が高いといえます。中国では人口動態やさまざまな製品の普及率を見ても、あらゆる局面で、まだまだ確かな「実需」が存在しており、今後もそれなりの成長が継続されると考えられます。
これらの状況の変化を背景に、製造業を巡る中国の事業環境は大きく変化しています。廉価な労働力市場に頼った製造モデルは既に限界に達しています。「国内経済成長=労働賃金の上昇」であり、「内陸部の成長=沿海部への出稼ぎ労働者の減少」を意味します。中国に進出している多くの日系製造業にとって、中国経済の成長が事業環境の悪化を招くというおかしな結果になっています。現状では多くの日系製造業がまだ“旧来”のビジネスモデルにおける運営にとどまっているように見えます。しかし、今後を考えれば、ビジネスモデルを再デザインしなければならない時期に来ているのではないでしょうか。
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