では、これからの中国事業には、どのようなビジネスモデルが必要なのでしょうか。現在、中国には2万3000社を超える日系企業があります(JETRO調べ)。その多くが2001年の中国WTO加盟後に、独資100%で登記された中国現地法人です。製造業の場合、中国工場は海外製造拠点としての位置付けが強く、生産品の大半を輸出しているケースが多いようです。つまり、中国に現地法人を持ちながら、中国における内需拡大の恩恵を受けていないのが多くの企業の実情といえます。
中国進出初期である1980〜1990年代に設立された現地法人は、一部の例外を除いて、当時の国営企業と合弁を組み、さらに51%以上の資本を中国側パートナーが持つことが求められてきました。当時の国営企業と言えば、社会主義を体現するような存在で、日系企業各社も合弁事業ではかなりの辛苦をなめさせられたはずです。こうした苦い経験から、2003年以降、外資規制が緩むとともに、資本比率を51%以上に引き上げ、日本側が経営権を持つケースが続出したという経緯があります。
確かに、中国で「モノを作る」ということだけを考えれば、独資100%の方がさまざまな面で都合がよいでしょう。しかし「モノを売る」となると少し事情は異なってきます。独資100%の外国企業が、中国系企業との取引を増やしたり、広大な国土、特に成長著しい内陸部でモノを売ったりするには、有形無形を含むさまざまな障壁が待ち受けています。
これらの多くの障壁を乗り越える1つの方策が中国企業との協業です。この場合、単なる業務提携ではなく、資本レベルの提携がキーポイントになります。つまり、独資100%の資本政策をやめ、中国企業の資本を受け入れる、もしくは、あらためて中国企業と合弁会社を立ち上げる思い切りが必要だと考えます。
過去に多くの日系企業が手痛い目にあってきた中国企業との合弁ですが、現在の中国企業は当時の国営企業とは大きく異なります。近代的な経営手法を取り入れ、世界市場で高いポジションを築いている企業も増えてきています。他の外資系企業の取り組みに目を移すと、内需取り込みを目指した中国企業とのパートナーシップ構築は企業統治に長ける欧米企業が先行しているのが現実です。中国でどのようなビジネス展開を行うのか。中国の成長スピードからすると、日系企業に残された時間はあまり多くはないことに早く気付くべきでしょう。
次回は、中国企業=中国製品の東南アジア戦略について、幾つかの実例(家電、携帯電話端末、鉄道など)を基に紹介するつもりです。東南アジアにおける中国のプレゼンスは、年々増加しています。ぜひお楽しみに。
(株)DATA COLLECTION SYSTEMS代表取締役 栗田 工(くりた たくみ)
1995年 Data Collection Systems (Malaysia) Sdn Bhd設立
2003年 Data Collection Systems Thailand) Co., Ltd.設立
2006年 Data Collection Systems (China)設立
2010年 Asprova Asia Sdn Bhd設立- アスプローバ(株)との合弁会社
1992年より2008年までの16年間マレーシア在住
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