メカ設計者のための用語辞典。今回は「モデリングカーネル(カーネル)」について解説する。
「モデリングカーネル」は、3D CADにおけるソフトウェアライブラリである。英訳は「Geometric modeling kernel」であり、「カーネル(Kernel)」は果実の仁や穀物の種子を意味する英単語で、ソフトウェアにおいてはOSやプログラムの中核部といった意味となる。モデリングカーネルは、3Dモデルの形状をグラフィックス描画する際のロジックを定義する。3D CADにおいては、縮めて「カーネル」と呼ばれることが多い。
3D CADソフトウェアにおける処理は、カーネルをベースにしている。3Dモデルのファイル形式(拡張子)もそれに準じる。カーネルには、CADベンダーが独自で自社製品向けに開発するものと、CADベンダーなどが外部にライセンシングする市販のものがある。カーネルの種類は独自のものを含めると多岐にわたるが、多くのソフトウェアでは市販カーネルを採用する。また、複数のカーネルを併用する場合もある。
ソリッドモデリング作成のロジックそのものは大まかには変わらないが、それぞれ幾何形状の定義の様式が少しずつ異なり、長所/短所もある。それぞれのカーネルによる3Dモデルデータは直接連携できないため、中間ファイルを用いてデータ交換を行う。ただし近年、3D CAD側の処理で、さまざまなカーネルの3Dモデルデータを連携させる技術が登場している。
よく知られる市販カーネルには、旧UGS(現在のシーメンスの一部)が開発した「Parasolid」と、かつて旧Spatial Technology(ダッソーが買収)が開発した「ACIS」がある。
Parasolidはシーメンスの「NX」と「Solid Edge」の他、ダッソー・システムズ・ソリッドワークスの「SOLIDWORKS」、コダマコーポレーションの「Topsolid」などが採用している。
ACISはオートデスクの「Inventor」、クボテックの「KeyCreator」などが採用する。IronCAD社の「IRONCAD」やトヨタケーラムの「Caelum XXen」はACISとParasolidを併用するデュアルカーネルである。
ダッソー・システムズの「CATIA」は独自カーネル「CGM」を用いている。CGMはミッドレンジ3D CAD向けとしても外部へ提供している。
国産カーネルであったリコーの「DESIGNBASE」は2008年に開発を中止しており、搭載していたフォトロンの「図脳RAPID3D」も販売終了となった。後継である「図脳CAD3D」はCGMを搭載している。
PTCの「Creo Parametric」については、Pro/ENGINEER時代からの独自カーネル「GRANITE One」を用いている。こちらは外部へは公開されていない。
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