メカ設計者のための用語辞典。今回は「公差設計」について解説する。
公差とは、部品や装置などの製作時に、設計者が定める基準値から許容される最大値と最小値の差を示す。公差設計とは、文字通り、公差を踏まえた機械設計を行うことである。
部品加工や製品組み立てにおいて、指定した寸法に対して誤差が完全にゼロになる状態で仕上げることは、理論的に不可能である。よって設計者は、加工部品の仕上がりや組み立てた製品の寸法差において、設計の要求仕様が十分満たせると考える許容値を指示する。
製作担当は検収時に、設計者が図面で指示した許容値に製作部品の寸法値が収まっているかどうか寸法測定を実施する。その寸法が許容値に収まれば良品、外れたものは不良品となる。
公差の指示は、「100±0.05」というように寸法値に対して上限値と下限値を均等に指示するケースと、「100+0.02、−0.08」というように基準値に対してそれぞれ上限値と下限値を設ける場合などがある。さらに厳密に寸法定義を行いたい場合は、幾何公差を指示する。
寸法値は中心値だけを記入し、図面枠に記載された一般公差表を参照させる形を中心とし、厳密に管理したい寸法に関しては前述のような個別指示を行う。逆に「10mmくらいの長さ」という程度の精度でよい場合は、(10)というように参考寸法として指示する場合もある。
無意味に厳しい公差指示ばかりしてしまうと、製作コストの高騰、あるいは製作不能といった事態を招いてしまう。製品製作には当然、誤差が付き物であるため、設計側は設計意図や設計思想に基づいて、絶対に譲れない寸法値と、厳密な管理が不要な寸法値とを区別しながら、寸法関係で適度な“遊び”も考慮した設計を行うべきである。寸法公差を決める根拠は、部品加工の誤差、使用条件による変形、機構動作などを考慮する。公差計算は複数の部品を考慮して行うことから、表計算ソフトを用いることが多い。
なお「公差解析(シミュレーション)」は専門ソフトウェアを導入し、公差計算や統計学的な詳細分析をする場合が多い。広義では公差設計も含めて表現することもある。
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