ファブレスメーカーのママさん設計者が、機械系モノづくりの“生”現場を渡り歩き、ありとあらゆる加工の世界を分かりやすく解説していく連載。今回は15年にわたりCAD/CAMを活用し続ける金属加工業の日本インテックを訪れた。
モノヅクリストの皆さん、こんにちは!
時代が移り変わっても、日本経済を支える屋台骨が第二次産業、特に「製造業」であることは今もって変わりません。それは「製造業」が、多額の設備投資をして原材料やエネルギーを大量に「消費」しながらも大量に「生産」を行う、資本の循環を直接促す産業だからです。そして生産過程に関わる人の範囲と裾野はとても広く、製造業とそれに携わる人達は「生産者」でありまた「消費者」です。小売を行う第三次産業は、「消費者」と「生産物」がそろわなければ成り立ちませんね。従って製造業(第二次産業)が最も経済への波及効果が大きい産業だと分かります。
加えて、近年急速に広がりを見せている「パーソナルファブリケーション」。専門知識を持たない、仕事としてモノづくりに携わった経験のない個人でも、本格的かつ実用的なモノづくりをDIYできるこの環境が注目をあびる裏には「モノづくりがしたい人」がいまだ多く潜在していると思われ、長年「ニッポンのモノづくり」をなりわいにしてきたプロ側にとっては歓迎すべき現象だと考えてよさそうです。
さてDIYでは、設計から製作まで個人が自己責任で行いますから、途中で何かしらの問題が起きても自分さえ納得できれば変更や修正は自由にできますね。対して産業用では、メーカーが設計した部品図(部品データ)を受け取った各部品メーカーが部品加工を行い、出来上がった部品をメーカーが集めてアセンブリするという流れが一般的です。複数の会社が関わるため、流れの中間で「この形状では加工できない」とか「公差が厳しく歩留まりが悪くてなかなか合格品があがりません」などの問題が生じると、納期遅延などさまざまな影響が生じて、関係する他社にも迷惑を掛けてしまいます。もちろんあらかじめ何事も起きないような設計をすればいいんですが、事件はいつも現場で起きるのです。また、ケガの功名といいますか、瓢箪(ひょうたん)から駒といいますか、トラブルによって現場から「ヒント」をもらえるケースもあり、実に現場には机上では得られない情報が詰まっています。
そこで、本連載『ママさん設計者の「モノづくり放浪記」』では、現場取材を通して加工現場の生の声をお届けしながら、個人でモノづくりに取り組む方にはより深く、業務として取り組む方にはより幅広く、いま一度、読者の皆さんに「ニッポンのモノづくりの世界とその現実」をお伝えしていきす。お付き合いのほどよろしくお願いいたします。
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