リコージャパンは「第37回 ものづくり ワールド[東京]」の構成展の1つである「第8回 次世代 3Dプリンタ展」に出展し、パール楽器製造および井上企画と共同で取り組んだ「環境配慮型ドラム開発プロジェクト」に関する展示を行っていた。
リコージャパンは「第37回 ものづくり ワールド[東京]」(会期:2025年7月9〜11日/会場:幕張メッセ)の構成展の1つである「第8回 次世代 3Dプリンタ展」に出展し、パール楽器製造および井上企画と共同で取り組んだ「環境配慮型ドラム開発プロジェクト」に関する展示を行っていた。
展示ブースでは、3Dプリンタで造形されたドラムセットの実物に加え、プロのドラマーによる演奏の様子や製作工程などを紹介する映像も流していた。
パール楽器製造では、楽器製造時に発生する廃材の削減や有効活用など、環境に配慮したモノづくりの推進を目指しており、その一環として、リコージャパンおよび井上企画と共同で、ドラムのシェル(筒状の胴部分)を廃木材を含む樹脂ペレットで3Dプリントし、フルセットのドラムを製作するという新たな試みに挑戦した。
「木材を多く使用するドラムの製造において、以前から環境に配慮した取り組みを会社として推進する必要があると感じていた。そうした中、廃木材を材料として活用できる3Dプリント技術に出会い、2〜3年前からプロジェクトとして取り組みを開始した」(パール楽器製造の説明員)
シェルの造形に使用されたのは、エス.ラボ製の超大型ペレット式3Dプリンタ「茶室」で、22インチのバスドラムのシェルを1時間強で作り上げることができたという。「ドラムのシェルを一体造形できる大型の3Dプリンタであることが必須だった。また、廃木材を含むペレットで高速造形できる点も採用の決め手となった」とパール楽器製造の説明員は述べる。
プロジェクトでは、リコージャパンが井上企画に対して3Dプリンタや周辺装置(リサイクルラボシステム)の導入を支援。井上企画は、廃木材を含む樹脂ペレットの製造およびシェルの造形を担当した。使用された廃材は、実際にドラムの素材としても用いられるメープルの端材だ。これを木粉に加工し、樹脂と混練して作製したウッドプラスチックを材料として活用した。
そして、出来上がったシェルをパール楽器製造が組み上げ、音の調整を施し、ドラムとして完成させた。
「全く新しい試みだったが、品質も十分で、サイズ調整を何度か行った程度で、意外なほどスムーズに仕上げることができた。穴あけなどの加工もほぼ普段通りに行えた。従来の高級ドラムは製造に1カ月ほどかかることもあるが、3Dプリントなら短時間で製造できる。表面の仕上げや塗装もせず、そのまま使うことができた点もスピーディーな開発に貢献した」(パール楽器製造の説明員)
パール楽器製造が将来的に目指すのは、実際のドラム製造工場から出る廃木材を原料として活用することだ。「通常、ドラムのシェル製造には、接着剤や樹脂などを含む合板が用いられるため、簡単に再利用できないという課題がある。そのため、今回は別途調達したメープルの端材を使用したが、将来的にはドラム製造で出た廃材を原料として活用する方向を目指したい」とパール楽器製造の説明員は展望を述べる。
なお、今回製作した環境配慮型ドラムは、製品としての一般販売を視野に入れているという。「まずはスネアドラムから販売を開始するなど、市場の反応を見ながら展開していきたい」(パール楽器製造の説明員)
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